向こうの4人席から聞こえた言葉。
着慣れたスーツ、細くはない体格で、しっかりと黒髪を肩迄伸ばした女性が笑っておりました。
仕事も酒も、あたしは男に負けないよ。
高笑いしつつジョッキを飲み干す姿には、しっかり女性の魅力もありました。
もちろんそれを上回る迫力も。
酒を飲むなら心意気、話をするなら大人の色気、男も女もすべからく。
そうじゃなければ、ただの酒に溺れた酔っぱらい。
かの女性、ちゃんと気遣い出来ておりました。
そんな酒絡みの人模様、酒の摘みに最適で酒も美味しくなりますな。
もちろんこちらの席の話も盛り上がり、あの人この人の噂話はみんないいことばっかりで、
陰口悪口嘘話なんて酒を美味しくさせない話は、全く一切出て来ない。
それは気持ちの良い酒でした。
あたしに任せておきなさい!
そんな声がまたまた聞こえて来る頃は、居酒屋全体に笑い声が溢れておりました。
時は5月。
まだ夏には早い、風が気持ちの良い夜の事。