ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ジョン・デイリー

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あまり「メジャー」としての興味が持てない全米プロだけど(そもそも全米プロなんてのはアメリカだけの競技であり、4大メジャー競技とするなら世界マッチプレーとか世界選手権を各国持ち回りでするべきだと思っている)、昨日ゴルフチャンネルを見ていてジョン・デイリーについての放送に目が行った。

ジョン・デイリーが、ニック・プライスの参加取り止めによりキャンセル待ち9番目で「出場OK」の連絡を受けたのは、1991年のクルックドスティックゴルフ倶楽部の第73回全米プロ開幕直前。
急遽アーカンソーから車を飛ばして、会場に着いたのが初日の朝。
そこで一球も練習出来ずにぶっつけ本番でのスタートで、初日69...二日目67で首位...三日目69...最終日71(パー72)で、優勝!
このときジョン・デイリー25歳、ツアー初勝利が全米プロ選手権だった。
この時の様子を自分はテレビで見ていた。
始めに初日の成績が良いのでテレビに映った時には、180センチ100キロの巨体で超オーバースイングで全ショットフルショットで引っ叩く...解説者やアナウンサーが吹き出す様なゲテモノ扱いだった。
「とんでもないスイング」「あんなスイングでよく当たる」「化け物のように飛ぶけれど、こんな調子が4日間続く訳が無い」...そんな言葉ばかりを聞いた記憶がある。
しかし、ほとんど全ての関係者の予測を裏切ってジョン・デイリーは優勝してしまった。
その後、手のひらを返したように彼のスイングの良い所を偉そうに解説する人々が凄く滑稽に見えた。

まるで規格外れの野生児に見えたジョン・デイリーが、実は少年時代から父親のDVにあって苦しんでいた、と言う事を昨日のテレビで知った。
その所為か大学のゴルフ部の時にはすでにアルコール中毒気味であり、アルコールをやめないとチームの代表にしないと言われた事もあったとか...
短い映像ではあったけど、若いジョン・デイリーがアルコール中毒の為か手が震えている場面がいくつかあった。

シンデレラストーリーでのメジャー制覇の後、一気に金と名声と女がジョン・デイリーに押し寄せる。
精神的に傷を負っていて情緒不安定なジョン・デイリーは、その全てに溺れてしまう。

有名になった彼には他の有名人が声をかけるが、彼はそうした有名人に親しくされるだけで有頂天になってしまい、まるで一ファンのように「有名な人」に興奮する。
使っても翌日にはまた舞い込む金は、使い道が判らずに浪費し、ギャンブルに狂い出す。
女は金と名声を手にしたデイリーに寄ってくる...ジョン・デイリーは3度の結婚に失敗するが、それの原因に父親と同じようにデイリーもまたDVが関係していなかったか...
そして上手く行かない事全てが、その度にデイリーをアルコールの海へと突き落とす。

ジョン・デイリーは1995年、セントアンドリュースのオールドコースでの第124回全英オープンにも勝ってしまう...ツアーわずか5勝のうち2勝がメジャーというジョン・デイリー。
タイガー・ウッズにも負けない飛距離と、天性の柔らかいタッチのアプローチやパッティングを持ちながら、たった5勝しかしていない事がデイリーの波瀾万丈の人生の証拠だろう。
あの衝撃の優勝を目にしていたからこそ、その才能の浪費と挫折を本当に惜しいと思う。
その破滅型の人生を歩む原因の様な事を昨日のテレビで知り、改めて彼の才能を惜しむ。

が、心のどこかでそんな人生を歩む男を、羨ましいと思う様な自分がいる。
あんな男がいる事にほっとすると共に、タイガーよりずっと彼に共感している自分がいる。