ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

Slow back, Slow down

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「Slow back, Slow down」...スコットランド古諺。

誰でもが聞いた事がある言葉だろう...「ゆっくり上げて、ゆっくり下ろせ」。
遥か昔のスコットランドで人々がヒッコリーシャフトのクラブでゴルフを楽しんでいた時代から、先端科学に基づいた新機能クラブでゴルフを楽しむ今の時代まで言い伝えられて来た「スイングのポイント」。
...色々な事を勉強し、様々なゴルフを体験し、迷い道を延々とふらつき歩いたあげくに戻って来る言葉。
結局、「ゴルフスイングとはこれなのだ」という事がわかるまでにどのくらいの失敗を重ねて来ただろう,,,ベテランゴルファーには、そんな感想を漏らす人が多い。

ゴルフクラブと言う物は、実に微妙な重さだと思う。
野球のバットやテニスのラケットと違い、先におもりがついてそれなりによく撓るクラブは、力を入れて振り回せばいくらでも速く振れそうな気がする。
強く握って前腕に力を入れてちょいと足腰で反動をつければ、恐ろしい程の風切り音が出るし、ボールに当たればどこまでも飛んで行くように感じられる。
自分は非力だと感じる女性や年寄りにだって、ゴルフクラブはその辺にある棒切れなんかよりよっぽど速く振れるし、振り回しやすい。
...だから、ゴルフはうまく行かない。

自分から決して動けないボールは、打つ人間の欲や見栄や願望で満身の力が込められたようなクラブの言う事は絶対に聞かない。
いくら力を入れようが、気合いを入れようが、ボールは打った人間に悲しみと絶望を残してどこかへ消えて行く。

遥か昔のスコットランドのゴルファーは、大きくしなるヒッコリーシャフトと、小さなフェースのクラブと、非常に高価なボールを前にして、「どうすればボールが言う事を聞いてくれるのか」を考えた。
そして、試行錯誤の結果「Slow back」...つまり、ゆっくりバックスイングして...「Slow down」...ゆっくりダウンスイングを始めれば、ボールはかなり言う事を聞いてくれる事に気がついた。

どうしても、ゴルファーはボールを前にすると平静ではいられない....自分のチェックポイントを考えるあまり、アドレスで固まってしまう人もいる。
そういう人は、やっと決心して動き始めるといきなりバックスイングでトップスピードになって、バタバタのまま打ち終える...まるで、不味い食い物を味がしないうちに飲み込んで逃げようとするように。
あるいは、飛ばす為には反動が必要だ、とばかりに思い切りバックススイングとダウンスイングを速くしようとする...ちょっとでも途中でスピードが落ちると、全然飛ばなくなると言う恐怖心があるみたいに。
あるいは、やっとバックスイングが速すぎるとミスが多いと気がついたのに、トップからはいきなり猛加速をしようとする...インパクトまでに自分のヘッドスピードが加速しきれないんじゃないかという不安に襲われて。

実際には「ゆっくり上げてゆっくり下ろす」と言うのにもリズムが必要で、ただ遅ければ良いってものではない。
ダウンの始めはゆっくりでも、インパクトまでにはその人に合ったリズムでの加速が必要だし、スイングのメリハリと言う物が無くてはキレのいいショットは打てない。

よく言われる「脱力スイング」というのもこの言葉と共通してはいるが、「ゆっくり」にしても「脱力」にしても重要なのは無駄な力の入れ過ぎが問題なのであって、全身脱力したりゆっくりが過ぎて間延びしたスイングは悪い結果にしかならない。

よく名言で「竹箒を振るように振れ」とか「大きな鎌を振るように」とか言われているのは、ゆっくりではあってもきちんと使う筋肉は使い、全身も緩んでいなくて「調和のとれた緊張状態を保ちながらスイングする」事がポイントだからだ。

「ゆっくり上げて、ゆっくり下ろす」事は、簡単なようで恐ろしく奥が深い言葉。
普段の練習から、この言葉を意識して自分のスイングリズムを作り上げると良い...上手くいった時には「ゆっくり振れている」し、「上手く脱力している」し、「軽く振っているように見えるのによく飛んでいる」と言うスイングになっているはず。