ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

失われて行くもの

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もう今日から4月。
来週にはマスターズが始まり、いよいよゴルフシーズン真っ盛りとなる。
まだ芝やコースのまわりが緑になり、ふかふかとした緑の絨毯の上でのプレーには早いけれど、もう凍える様な寒さの中でのプレーはしなくて済む(多分)。

この前ほぼ十年振りくらいにディアレイクをラウンドしたが、以前と違ってしまって残念に思う事があった。それは、途中にいくつかあったリフトや人が乗るコンベアのたぐいが一つも無くなっていた事。
プレーとは直接関係ないのだが、例えばグリーンを終わった後、今のプレーを反芻しながら(反省しながらの方が多かったが)リフトに乗り込んだりコンベアに乗り込んで、そのままじっと乗っている間に目に映る景色の変化を楽しむのは好きな時間だった。
わずか数十秒の時間であっても、勝手に動いて行く乗り物から見るコースの景色や、まわりに咲く野の花や、緑濃い木々の色や空を飛ぶトンビの姿を見るのが好きだった。
これは、個人的な「密やかな、ゴルフに関係ない楽しみの一つ」だった。

今は全て乗用カートで済ませてしまう...以前は無かった乗用カート用の道を造って、そういった施設が無くてもどこでも行けるようになっている。

この辺の事情に詳しい人の話を聞いたが、結局そういった施設が老朽化した時にメンテナンスをする場合、酷く高い費用がかかるらしい。
塗装だけでも数十万から数百万、機械の更新やメンテだとすぐに数千万の金がかかるとか。
ならば、新しい道路を造ってもカートだけで済ますようにした方が圧倒的に安く済むのだとか...

こういった施設で一番自分が気に入っていて、「その為だけにでもゴルフに行っていい」とまで思っていたニューセントアンドリュースゴルフクラブのニューコースとオールドコースを結ぶモノレールも、もう既に運行を中止している。
このモノレールは小さな鉄道と言っていいくらい立派な施設で、2キロくらいの距離を結構な早さで4分近くの時間をかけて走っていた。
田んぼの上から樹木の間を走るそのモノレールからは、「日本の四季の移り変わり」を感じさせてくれる美しい風景を楽しむ事が出来た。
これほど立派な「小さな鉄道」は、その軌道のメンテナンスにもその車体のメンテナンスにも莫大な資金が必要になるのは想像出来る...おそらくもう二度とこのモノレールがあの軌道の上を颯爽と走る時は来ないだろう。

ゴルフ人口が増えて来てバブルが始まる頃に造られたコースは、そういったメンテナンスの費用の事など考えていなかった施設が多い....しかし機械も施設も時間が経てば必ず劣化して行く....そういった施設は結局、こういった時代には金をかける事が出来ずに静かに朽ちいくしかないんだろう...残念だけど。

最近、鉄道の廃線跡とか廃工場の跡とか、炭坑や炭住の廃墟を訪ね歩く事がブームになっているらしいが、自分にもそういったものへの思い入れはかなり強くある。
いろいろなコースをラウンドしている時に、そういった朽ちて錆びるに任せたリフトや車体を見る度に、栄枯盛衰の時の移ろいを思い、変わらざるを得ない全ての事ごとを思う。

それがまた、次の自分の一期一会のゴルフ・一期一会のショットを深くさせるのかも知れない。