ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

居酒屋話

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アメ横で探していたローバンスの58度ウェッジを見つけた。
そこそこ程度が良いもので、5千円で手に入った。
探し疲れと安心感で一杯引っ掛けてから帰る気になった。

入った瞬間に、「ちょっとまずいかな」と思った。
ほぼ満員の店内は、だいぶ酒が回っていそうな小柄な爺さんのところしか座れそうな席はなかった。
「相席させてもらっていいですか?」
「ああ、いいよ....あんちゃんゴルフやんのか?」
ビニール袋に包まれたウェッジを見てそう聞かれた。

やっぱり...酔っぱらいに話しかけられるのは面倒だなあ。
「はあ、まだ始めてそんなに経たないんで、ヘタクソですが...」
なるべくかかわり合わないようにしたい...髪は短くて、どうみても元サラリーマンには見えないし。
でも、遅かったみたい...

「俺もゴルフやるんだよ、もう40年以上もやってら...」
「はじめは親方に誘われて、嫌々始めたんだがよ...もう40年さ」
「昔は上手かったよ、俺も...70台で回ってたよ」
「体チッチェエけどよ、鳶やってたから足腰が強くてよ、結構飛ばしたんだぜ」
「親方ぁ、先代からの流れで墨入れてたからよ、風呂は入れなかったのよ」
「だから、俺は進められても墨入れなかったのよ、ゴルフのあと風呂入りてぇから」
「俺ぁ、きれいな体よ」
なんだか話が勝手に進んでる、俺は相づちも打ってないのに...

「今だって、月2はやってんだぜ、俺ぁ」
「でもな、なんだってんだあのルール改正ってのはよ」
「俺ぁ、若い頃は人に負けないくらい飛ばしたけどよ、もう75だぜ」
「年取って飛ばなくなったら、高反発とか言うのでまた飛ぶようになってさ」
「これで、また若ぇのといい勝負出来ると思っていたら、何が違反クラブだ?」
「あれ使ってたら、インチキだなんて抜かしやがって」
「そんで、今度は長ぇパターが禁止だって?」
「俺ぁ、事故って落ちた時に腰痛めてょ、長ぇ事下向いていらんねえんだよ」
「なにか? あのあーるあんどえーとか、じぇいあーるえーだとか言うとこは、年取った奴や飛ばねえ奴はゴルフやっちゃいけねえってのか?」
「なに言ってやんでぇ! 三百ヤードも四百ヤードも飛ぶ奴がゴルフ仕切ってんじゃねえよ!」
「俺ぁ、ゴルフってのは野球のホームランより飛ぶから気に入ったんでぇ」
「俺ぁ、野球じゃぜえぇったいにホームランなんか打てねえのよ...でも、ゴルフだったらセンターオーバー、バックスクリーンにホームラン打つより飛ばせんだぜ」
「それが面白くてゴルフ続けて来たってのによ」
「ルールなんて決める奴らに、ドライバーで150ヤードも飛ばなくなった奴の悲しさがわかんのか?」
「ちくしょー!」
「だいたい、高反発は違反だなんてえらそーな事言ってる奴が、ローカルルールだかなんだか知らねえが、6インチだっつってボールにべたべたべたべた触りやがってよ」
「ゴルフってのは、一回打ち出したら触っちゃいけねえんじゃないのかよ」
「俺ぁ、親方に教わった時からそれずっと言われてたからさ、今だってずっとボールに触っちゃいねえよ」
「あんちゃん、ボール触るんかい?」

来た!
目を合わせてなかったのになあ。
「はあ、時々...」

「そうかい・・・」
「は~あ...」
「ま、いろいろあらあな」
「今日はパターでも買ったんかい?」
「58度のウェッジ? ローバンス?」
「売る時は、あっちのXXゴルフがいいぞ」

寝ちゃったよ。
ちぇ! ひとの買い物にケチつけて。
また目さます前に、とっとと帰ろ...
ビール一本じゃ物足りないけど、しょうがない。


...爺さん、上手かったのかな。
あのウェッジ、使えねえや...難しすぎだ。
結局爺さんの言ってた店に、今日売って来た。

今日はいないのか...今日は話が聞きたいのにな。