ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ゴルフボールは、何もそんなに遠くに飛ぶ必要は無い

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「ゴルフボールは、何もそんなに遠くに飛ぶ必要は無い」...ハリー・バードン

ハリー・バードンは、19世紀末から20世紀はじめにかけて活躍した、英国の名ゴルファー。
全英オープン7回優勝した他、1900年の全米オープンに優勝したという記録もあるが、その名が「バードントロフィー」と言う、その年の最小平均ストロークのゴルファーに与えられる賞として残っている事でもその名手ぶりが判る。

そのスイングは「オープンスタンスでアップライト」で、それまでの「クローズドスタンスでフラット」という流れを劇的に変えたゴルファーと言われる。
その他に、バードングリップ(今で言うオーバーラッピンググリップ)を発明した事でも有名。

その名手が、1900年頃に発明されたハスケルボール(ゴムの糸巻きボール)が、それまでのガタパーチャボールより30~50ヤード飛ぶため、大流行した時に語ったのがこの言葉。

結局それほど飛距離が出てしまうと、それまで有効でゴルファーを悩ませていたハザードを、皆が軽々と越えて行く事になり、ゴルフの魅力が無くなってしまうと言うのだ。
ホール攻略に頭を使い、練習を重ねて努力して対抗して来たものが、いとも容易くバーディーやイーグルをとれるようになり、ゴルフは単なる数字の競争になってしまうと....

今の状況に似ていないだろうか...
プロの試合はパー4は、殆どのコースでセカンドにショートアイアンかウェッジ。
パー5は普通にツーオンして、バーディーをとるのが当たり前。
若い力のある飛ばし屋ばかりが有利になり、年老いたベテランに勝ち目は少ない。
長年鍛え上げ、磨かれた技術よりも、若いパワーこそが勝つ条件となる。

現実には、パットが特別上手いルーク・ドナルドが賞金王になったりする事もあるが、飛ばし屋対策に距離を長くしたコースでのメジャーなどでは勝ち目は薄い。

そういうゴルフは、大味で詰まらなくなり、ゴルフ本来の面白さを無くしてしまう、と言うのがハリー・バードンの言葉の意味。
それは、後年ジャック・ニクラスも同じ事を言い、「飛ばない」ケイマンボールを作ったりする。
まあ、ケイマンボールはあまりにも飛ばなかったために、ゴルフの一番の魅力であった「飛び」の面白さがなくなり失敗であったが...

一般のアマチュア...普通の楽しみでやっているゴルファーにとって、「飛ばし」は他の競技では味わえない「ゴルフだけ」の魅力なのだから、これが失われるとゴルフの魅力のほとんどは無くなってしまう(誰でも200ヤード近く飛ばせるスポーツなんて他には無い)。
だから、普通のゴルファーは飛ぶボールで良いし、飛ぶ道具でも良い。

ただし、プロはバードンの言う通り、「ボールはそんなに飛ばなくても良い」と思う。
最大で300ヤードしか飛ばないボールにするか、「ものすごく曲がりやすいボール」にするべきだと思う。
例えば、本当にほんのわずかなミスヒットでも、数十倍数百倍大きく曲がるボールだ。
完璧なスイングで完全に正確なヒットをした時だけ、「飛んでも良い」ボールなら良いかもしれない。
パワーさえあれば誰でも飛ばせるボールなんてのは、プロは使用禁止にするべきだ(勿論道具も、飛ばせないものを使うとか..)。

で、バードンさん、申し訳ないけど...ダッファーである我々は、多分これからも「もっと飛ぶボール」を探してゴルフ楽しみますので、それはどうぞ目をつぶって見逃してくださいな。

何しろ、気持ち良く飛びさえすれば、この世の悩み、苦しみ、悲しみ、ストレス、失意、後悔等々、沢山の積もり積もった重たいものを、空の果てまで吹き飛ばす事が出来る...ような気がするもので...