ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

忘れられないプロゴルファー...38「トム・カイト」

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トム・カイト、1949年12月9日生まれ。

印象としては、大きな試合では何時もいいところに顔を出しているのに、勝てない地味なプロゴルファー。
ドラえもんに出てくる「のび太」のような大きな眼鏡が特徴で、同じように眼鏡が印象的だったヘイル・アーウインが「プロフェッサー」なら、トム・カイトは「ガリ勉の努力家」のように見えた。
特に飛ぶわけでもなく、強くアピールするような技もない、正確性とミスをしないゴルフで、眼鏡の奥に気持ちを抑えた「我慢」のゴルファーとも見えた。

6才からゴルフを始めて、名匠ハーヴイー・ペニックに師事する。
2才下のベン・クレンショーとは兄弟弟子という関係だったが、少年時代は常にクレンショーに負け続けていた。
でも、それがトム・カイトにとっては、ゴルフをする原動力だったというのだから、この男、普通じゃない。
師匠からも「完璧主義者」だと言われるほど、見かけ通りひたすら努力する男で、ずっと強くなる夢を追い続けた男だった。(後年、彼自身が「自分は夢を追いかけ続けた」、と言っている)

ツアー通算は19勝(シニアは含まず)、メジャーは92年の全米オープンのみ。
この全米オープンのエピソードが彼らしい...なんとそれまで22回挑戦し続けた上での勝利だった。
マスターズをはじめ、上位に来たメジャーは数知れない(いつも一度は優勝争いに顔を出す)が、ノーマンと同じく「勝てない挑戦者」と言われていた。
他に彼らしいエピソードとしては、一勝しかしてなくても賞金王となったり、ライダーカップでは15勝9敗4分けという素晴らしい成績を残していたり...謂わばツアーの名脇役として時に主役を凌ぐ成績を残しながら、人々の記憶に強く残るような派手な活躍を見せることはなかった。

後年、アーウィンと同じように、トレードマークの眼鏡を取ってプレーしていたが、眼鏡を取った顔はどうにも違和感があってなじめなかった。
眼が見えてしまうことで、今までの眼鏡のおかげで表情が判らず「クールに耐えている男」のような印象があったのが、意外と表情豊かな男であったと判ってしまったからかも知れない。

ああ、何時も(勝てなくても)平気な顔に見えたこの男も、我々と同じ喜怒哀楽の上でちゃんと戦っていたんだ...って。