ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

忘れられないプロゴルファー...28「トム・レーマン」

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トム・レーマン、「苦労人」と呼ばれたプロゴルファー。
PGAツアーに参戦してから、メモリアル選手権で初勝利するまでに、実に12年の歳月をかけた。

1996年、ロイヤルリザム・アンド・セントアンズで行われた全英オープンで優勝して、やっと「世界の」一流プレーヤーの仲間入りする。
その全英オープンを獲った後のインタビューで、「今まで町を歩いても、誰も私を知らなかったけれど、今はみんなが挨拶してくれるんです.」と嬉しそうに語っていたのを覚えている。
ちょっと見は、「アメリカ西部の片田舎の小さな農場の素朴な親父」というイメージ。
スイングはお世辞にも綺麗とは言えない、インサイドアウトの極端な「かち上げる」ようなフォームで、フックしか打たないことを愚直なまでに通し続けているように見えた。
不器用でも徹底すればここまでなれる、となんだか勇気を与えてくれるようなプロゴルファーだった。

彼の一番の絶頂は1997年、4月21日から29日まで「たった一週間だけ」世界ランク一位に輝いた時。
素朴な男らしく、プレーっぷりも態度も変わらなかったけど。

そしてゴルフの女神は、残酷な仕打ちをする。
1997年の開幕戦、メルセデス選手権。
前年の8月にプロ宣言したタイガー・ウッズは、前年の10月には早くも2勝し、このメルセデス選手権でも優勝争いに加わった結果、トム・レーマンとのプレーオフとなる。
たたき上げの苦労人、職人のような地味なトム・レーマンと、スーパースターのオーラに包まれ、周りを黒人、アジア人、ラテン系の人々、そしてプア・ホワイトと呼ばれる人々が応援団として取り囲む、華やかな若きタイガー・ウッズとのプレーオフ
こんな損な役回りはないだろう。
新しいゴルフの時代を開けつつあるタイガー・ウッズと、まるで旧い時代の象徴のような立場になってしまったトム・レーマンと...
俺も、この時はタイガーを応援していた...まさに、目の前で創られつつあるゴルフの新しい歴史の証人になるようなつもりで。

一ホール目、トム・レーマンは持ち玉のフックがかかりすぎ、グリーン左の池に打ち込む...大歓声。
タイガー・ウッズは、ピン20センチへのスーパーショット...ゴルフ場とは思えないような大歓声に包まれる。
勝負あり...タイガーはこの年、これをきっかけに大爆発して、ターがー時代の幕を開ける(3ヶ月後には初のメジャー「マスターズ」に勝つ。)
トム・レーマンは、2005年のビュイックインビュテーショナルでも、タイガーと18番まで優勝争いをするが、ついにタイガーに勝つことは出来なかった。

PGAツアー5勝、好漢は運命のいたずらでスーパースターに敗れる役回りを、悪びれる事無く演じていった。