ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

先行き

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昨夜は久しぶりに所謂「ゴルフ業界人」達と酒を飲んだ。
かっては一緒にラウンドも多くしていたが、最近はそれぞれ環境が変わったためか会う機会も少なくなった、俺よりずっと年の若いゴルフ仲間だ。
だがついこの前まで「若手のバリバリ」だった彼らも、気がついてみるとこの世界の「中堅」から「ベテラン」の域に入っている。
以前は無責任に威勢良く檄を飛ばし意見を叫んでいた彼らも、今は現実と照らし合わせてそのギャップを埋めることに悩み苦しむ歳になった訳だ。

ちょうどその一日前、俺のところに一通の封書が届いた。
内容は、俺がまだ会員になって居る栃木のSゴルフコースの「12月一杯で閉鎖」というお知らせ。
このコースはあまり世間に知られてはいないが、1グリーンでそれぞれのホールが独立して居て変化があり、トリッキーさよりもそれぞれのホールごとの攻略の難しさがラウンドを飽きさせない、設計の良く出来たコースだった。
元は某有名設計家がしたとかの噂もあり、ホームが2グリーンだった俺には1グリーンの難しいコースというのは魅力だった。
ここの競技には出なかったが、奥さんを連れてスコアを付けずにいろいろなゴルフで遊んだ、実に面白いコースだった。
コースは常に整備を重ねていて、狭かったフェアウェイは広くなったし、ボールの行方が見づらい所などもいろいろと改良を重ねていた。
練習場も整備し、小さな小屋風のロッジも作り、グリーンの状態は常に良かった。
...が、経営はずっと苦しく赤字が続いていたという。
欠点は、何よりも東京からは遠かった事。
プレーフィーを下げても、周辺のコースも値段を下げており、価格競争は厳しかったという。
そしてゴルファーの減少...いつ行ってもプレーしているのはほとんどが老人達。
このコースをお気に入りの常連たちもラウンド回数が減り、若いゴルファーの数も増えない。
それらの事情でコース閉鎖を決めたとか...メンバーに対しては、いろいろなフォローを用意していた様で、書類を読む限りは「しょうがねえなあ」というのが正直な感想。

酒の上で論争になったのは、そんな事情の上で俺が「もう名門コースを『憧れの』だとか『理想の』だとかで、しょっちゅう記事にするのはやめろよ」
「名門コースは記事になろうがなるまいが、ゴルフブームが起きようが廃れようが、昔から未来まで変わらずにずっと続いて行く」「だが、それは俺たち庶民ゴルフファーには全く関係ない世界の話なんだ」
「俺たちにとっては安くて良質なプレーの出来る、貧乏人にも手の届く優良なコースの衰退や閉鎖が大問題なんだ」
「名門コースの事を記事にする暇があったら、そうしたコースの実情となんとかならないか(実はなんとかするのは非常に難しいって分かってるんだけどね)という、そのアイデアを募集したり記事にしろよ」
「我々がプレー出来るコースの問題の方がずっと大事なんじゃないか?」

そんな俺の意見に「名門コースの記事は絶対に必要だ」と言い張る元編集者の意見はついに一致はしなかった。

俺はずっと以前から、名門コースで名門の方々が続けている「ゴルフ」と、庶民が手の届くコースで遊ぶ「ゴルフ」は全くの別物だと思っている。
だがゴルフ媒体(特に雑誌類)は、どこも「ゴルフライフの究極のあり方」は名門ゴルフのゴルフだと書く。
あの会員権バブルの狂乱は、そんな媒体の記事に踊らされた庶民ゴルファー達が、自分たちもそうした「憧れのゴルフライフ」に参加できると勘違いして(騙されて)、悪徳金貸し達の作った「新設コースの罠」に嵌ったものだと俺は思っている。

みんな雑誌に騙されて、自分も「少数会員」の「有名設計家」の設計したコースで「憧れの名門コースのようなクラブライフ」が送れると夢見てしまったのだ。
そうしたコースで、自分の家族や子供達とも優雅で贅沢なひと時を過ごし、ゴルフは人生の一部として自分の人生を豊かにしてくれる、と...

結果、借金のみが残り、自分もゴルフなんかをやる余裕は無くなり、子供達はゴルフを憎むようになり...そんな話をどのくらい聞いたことか。

今、ゴルフ場の経営は苦しいだろうが、我々にとっては夫婦二人で1万円でプレー出来るコースが沢山ある事は非常に喜ばしい事だ。
二人で1万5千円も出せば、本当にたくさんのコースで遊べる。
これは貧乏ゴルファーにとっては、昔と比べたら夢のような天国なのだ...交通費は別として、大の大人が1日遊んで食事をして風呂に入って、それで1万円が掛からないのだ。
我々はこの環境を守らなくてはならない。
経営努力をしている優良なゴルフコースがみんな潰れてしまうと、後に残るのは庶民ゴルファーにとっての「ゴルフ不毛の大地」だけだ。
我々がもっとプレーをしなければ、と思うし、もっと若い仲間を誘って行かなければ、とも思う。

そして、このゴルフの面白さと深さと、本当に知れば一生楽しめるという魅力をもっと伝えなくちゃいけない。
「我々庶民のゴルフってのは、名門ゴルフと違って」、そんなにお金がかからないぞ、そんなに面倒なもんじゃ無いんだぞ、そんなに敷居は高くは無いんだぞ...そして始めてみれば、こんなに面白いものはそう他には無いんだぞ...そんなことを我々はもっと声を大きくして伝えなくちゃいけない。

その伝えるべき魅力や楽しさは、雑誌に載ってる「名門ゴルフクラブのゴルフ」とは全く関係無いものなんだから、と。