ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ゴルフは滅びる?...2

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ゴルフと言うのは興味を持ち、体験してしまい、はまり込んでしまうと本当に罪なゲームだと思う。
私個人の体験で言うと、「ゴルフなんてモノは絶対に自分の人生とは縁もゆかりも無いもの」だと思っていた。
一族郎党見渡しても、誰一人そんなものに触れる事が無かったという堂々たる一般庶民の貧乏人にとって、ゴルフに対する知識といえば「上流階級(と言ってもどんな人達だか知りもしないけど)・金持ち・政治家の老人達が、女を侍らして変な格好で棒振り回し、お互いの心にも無いお世辞を言い合うみっともない(しかし大変高価な)遊び」というものだった。
自分の人生にとっては、そんなものをやるなんて事は99・9999...パーセント無いだろうと思っていた(いや、そもそも「ゴルフ」なんて言葉が自分の人生の辞書には無かったか)。

それが始めるきっかけになったのは、フリーのイラストレーターとして山と渓谷社の仕事をしていて、その近所にあったゴルフダイジェスト社の仕事をするようになったから...そのきっかけがそれ以前広告イラストを描いていた時の知り合いがゴルフダイジェスト社の編集者になっていて、道でばったり出会ったため...と言う超偶然。
それでもゴルフをするには抵抗があって、実際にプレーを始めるには時間がかかったんだけど...これが始めてみたらいっぺんにハマる程面白かった!
それは、本当に山登りや岩登り、あるいは冒険の旅に似て,,,イギリス発祥のゲームに多い、自然と自分の戦いであり、簡単には上手くならない技術があり、心の状態が影響する繊細さがあり...
食わず嫌いの人程ハマるゲームで、当時ゴルフを始めた人で自分と同じような道をたどった人は非常に多かった。

そんな風にゴルフに熱中した人は、必ずゴルフの歴史やその精神性にも興味を持ち出し、その楽しみをなお深く味わいたいと思うようになる...そこで「ゴルフ倶楽部」と言うものに突き当たる。
ゴルフ倶楽部...ゴルフに熱中し興味を持った同好の士が集い集まる「閉ざされた」空間だ。
ゴルフ雑誌やテレビの番組で、このゴルフ「倶楽部」と言うものが、どれほど素晴らしいかを繰り返し紹介する。
所謂「名門」と言うヤツだ。
その名門ゴルフ倶楽部では....倶楽部の雰囲気、コースの状態と歴史、会員達とコースの支配人達の優雅な付き合い、その贅沢な時間の過ごし方、名門独特のマナーの紹介...そんな記事が必ず毎週掲載され、それこそがゴルフの「理想」だとばかりに教育しようとする。
確かにそんな記事を読むと、「ああ、名門ていいなあ」「優雅なゴルフっていいいなあ」「こんな歴史って素晴らしいなあ」なんて思うようになる。
そして、「いつか自分もそうなりたい」なんて思うようになる。

...それが不幸の始まりだった。
考えてもみればいい...「倶楽部」と言うのは、「閉鎖された仲間だけの空間」なのだ。
それは、「嫌なヤツ」や「嫌いなヤツ」や「気の合わないヤツ」「意見の合わないヤツ」、そして「身分の違うヤツ」「毛色の違うヤツ」そして「仲間じゃないヤツ」を拒否出来る、つまり「差別」を前提とした仲間だけの場所なのだ。
それが許されるから、その中にいる人たちのとっては「寛げて気持ちのいい空間」になるのだ。

我々が金を稼ごうと名前を上げようと、その中には入れない。
つまり、雑誌で紹介される「憧れの名門」と言うのは、普通の貧乏ゴルファーである我々には「あらかじめ拒絶された空間であり、我々には「絶対に」関係のない世界なのだ。
...ある当時の名門コースに、一代で富を築き上げた男がなんとか入会出来たと言う話を聞いた事がある。
やっと名門コースに入会して、喜んで仕事で世話になった人や、これから仕事をする関係の人などを連れて行ったら、陰で「あの成金が...」「あんな下品なヤツが...」とずっと悪口を言われ続けて、酷く居心地の悪いものだったとか...
(レストランで、空いているので奥の席に座ったら、「そこは座ってはいけません」と言われた...そこはメンバーの中で一番の重鎮の方々が座る場所で、新参者が座るなんてとんでもない話だったと後日知ったとか)
これは名門と言うものへの悪口ではなく、閉ざされているからこそ会員に居心地のいい空間になる、という事実を言っているだけ...外部の人間がすぐに入れるなら「倶楽部」ではなくなってしまうんだから。

そんな時代、私の様なゴルファーが爆発的に増えたため、平日でもゴルフ場のスタートをとるのが難しくなっていった。
平日で一ヶ月前の同日に電話予約受付開始なんて場合,9時開始だとすぐにかけてももう話し中で繋がらない...結局1時間2時間後に繋がった時にはもう一杯だった、なんて事が普通になって来た。
それに上手くなる為には、競技もやってみたいなんて気持ちが強くなると、たどり着くのは「どこかのコースのメンバーになりたい」と言う結論。
まだ会員権バブルの始まる前でも、名の知れたコースは高くて無理...しかし、手の届く会員権のコースは名門の香りなどどこにも無く、会員数も何万人と噂されるコースばかりだった。
しかし、少しずつゴルファー人口の増加とともに会員権は上がり始め、ゴルフを愛した多くの人は慌てて手の届く会員権を買い始めた。

そして、こんな流れに目を付けた有象無象が、会員権ブームを起こして行く。
その流れの中で、こんな気持ちでゴルフを愛した人たちが、自分たちのコースを求め、自分たちの「倶楽部ライフ」を求めてブームに乗ってしまったのを誰も責められないだろう。

その結果、本当にゴルフを愛そうとした沢山の人々が、絶望して去って行った事も...

ゴルフが滅びへの道を辿り始めるきっかけになった、と私が考えているのがこの「会員権ブーム」。
このことはまた次回。