ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

松村博士の技術

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以前、こちらのブログにも「松村信吾の発掘ノート」を書いてもらっていた「松村博士」は、まだ20代の若さながらゴルフ史の秘話の発掘や、今に残る貴重な資料の収集研究に情熱を捧げている研究者だ。
研究ばかりではなく、自身ヒッコリー時代の道具の収集や当時のスイングの実践を行っている現役ゴルファーでもある。

最近私がヒッコリー用にとオクで落としたボールには、様々な(超)古い見たことも無いボールが一緒について来た。
これらのボールは、私にとっては実際に使えない古過ぎるボールだが、彼にとっては全て研究・収集に価値のある物達だと言うので、松村博士にプレゼントすることにした。
すると、彼は「オクで落としたヒッコリーのクラブで、使えない物でもある程度修理出来ますよ」と言ってくれた。
実際問題、オクで落としたヒッコリークラブのうち3分の1は使用不可能と思える程酷い状態だったが、残り3分の2のうち半分近くは「打てるけれども、不安も多い」状態だった。
そんな中でJARVIS & WHITEのパターは、打ちやすいんだけれどシャフトが釣り竿のように曲っていて、ショートパットが打ち難く、使えそうも無いと感じていた。
そしてもう一本、何本か手に入れたミッドアイアンの中で一番打感が良かったスコットランドのABE MITCHELEのアイアンが、ネックから打つ度に音がするので使用を諦めていたものだった。
他の折れていたりヒビが入っていたりする物は彼にプレゼントすることにして、この2本が治るならば修理して欲しいと彼に頼んだ。
それから10日あまり...昨日彼から受け取った2本は写真の通り。

パターのヒッコリーシャフトの曲がりは、殆ど気がつかないくらいに真っすぐに直っている。
これはスムーズに修理出来たとか。
ところがもう1本のミッドアイアンには、さすがの彼も手こずったらしい。
博士曰く「前の持ち主が何回も修理していたらしく、ネックは酷く痛んでいて...弛みが出る度に釘を打ち直したり、ネックを叩いて潰して締めていた」らしい。
それを抜いて色々と調整して、緩み無くきっちりと指し直した状態が大きな方の写真。
前の持ち主の雑な修理の為に、ヒッコリーのネックのあたりに小さなヒビが沢山あり、そこからヒビが広がるのを防止する為にネックに余分に糸を巻いて補強してある。

...見事な物だ。
彼はヒッコリーークラブの修理方法も色々と研究していて...多分もう既にヒッコリーのクラブを修理する技術は一流なのではないか?
ただ、この技術は本当に少数の残存しているヒッコリークラブ用の物で、これが仕事になって稼げるとかには決してならないだろうから、あくまで彼の趣味の一つにしかならない...それは、非常に惜しいと思う。



そうそう、M氏の会社で現在でも使えるように新しく生産されている「タッドモア」のヒッコリークラブセットを触らせてもらったが、これは現在使われている普通のクラブとバランスとか重量とかと変わりなく(番手分けは昔と同じマッシーとかニブリックとかになっている)、グリップしたり軽く振ってみると違和感無く振れる...古いヒッコリーのクラブに感じた物とは全く違ったものだった。
現代のクラブを使っている人がいきなりこれを使っても、普通に使えるはず。
試打した人の話では、ヒッコリー独特の「節目の無いしなり」が違うだけで、普通に打てたとか...


でも、オレ的には「それじゃあ、つまらない」。
ヒッコリークラブってのは普通のクラブと決定的に違っていて、それを振れるようになっただけで「ヒッコリークラブが自分のゴルフの殻を破ってくれた」なんて方が面白い。


後でヒッコリークラブ振ってみたけど
...左足首は、まだまだ、だったなあ。