ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ぶっ飛ばしたいなら、まず両腕の力を抜け

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「ぶっ飛ばしたいなら、まず両腕の力を抜け」...ジーン・サラゼン。
ジーン・サラゼンは、1920~30年代を代表するプロゴルファー。
サンドウェッジの考案者でも知られている。

この言葉、多分聞いたって出来はしないだろう。
ボールをセットして「飛ばしたい」という気持ちになった時、腕やグリップに力を入れるのは当たり前。
ものを投げるにしろ、棒や剣で何かを叩くにしても、そういう気持ちになったら自然に上腕や前腕や握っている手に力は入る。
重いモノを投げたり、重い剣で叩き切ろうなんて思ったら、力を入れなくちゃ狙った所に飛ばしたり叩き込んだり出来ない。
それが人間の本能的な動きで、人間はそうやって生きて来た。

ところがゴルフに関しては、飛ばしたいと思って腕に力を入れてもちっとも飛ばない。
むしろ普段より力を入れた分だけ曲ったり、当たり損ねのミスになる。
普通のアベレージゴルファーが「ここ一番」で飛ばそうとすると、まずグリップに力が入り続いて前腕に力が入り筋肉が硬くなり、肘は外側に向いて、肩の筋肉が盛り上がり肩とグリップを結んだ三角形はガチガチに筋肉で縁取られる。
そしてついでに大胸筋が硬くなって盛り上がり、ちょうどゴリラが胸を張って威嚇する様な姿勢になる。
スイングを始めればトップまでにどんどん力が入って行き、普段のトップの位置まで来たら「ここが勝負!」なんて気持ちになって、更にもう一段トップを深めて力を貯めようと力の漲った両腕が頭の上を舞う。
頭はスエーしたあげくに戻って来てボールを殺気を持って睨みつけ、最大限に力を入れあげた両腕はクラブヘッドを頭の前にまで振り回し、息を止めて集中した気合いは窒息しそうな苦しさの中で「ボールを引っ叩く!」ことだけを思って....あとはそれを解放すればいい...はずなんだけど。

手応えは情け無い程の「外れ」感覚で、ほぼインパクトと同時に自分の口から悲鳴が飛び出すのを感じる。
飛んで行くボールを見つけると(殆どの場合はボールは見失っているはずだけど)、自分の思いとは正反対の方向へ情け無く飛んで行く。

みんな覚えがあるはずだ...当然自分もある(笑)。

原因はなんだろう?
簡単に言えば、ゴルフクラブは軽すぎるし、細すぎるし、長すぎるし、打つ場所が変な位置についていすぎるから。
腕に力を入れることで、軌道が反れ、ブレーキがかかり、スイングのタイミングもリズムも滅茶苦茶になり、自分でも驚く様なトンデモショットになってしまう。
そして運の悪いことに、ごくたまに出会い頭のまぐれ当たりショットで飛んでしまうこともある。
100回打って100回ミスすりゃどんなアホでも間違いに気がつくものなんだけど、100回に1回あり得ない様なミスショットで飛んでしまう...悪い動作と悪いタイミングと悪いリズムが重なって信じられない好結果になることがあるのだ。
ただ、そんなものの再現性は「全く無い」のに。

ところが上級者やプロになると、飛ばしたい時には「クラブヘッドに仕事をさせる」ということが判っている(逆に言えば「クラブヘッドに仕事をさせることが出来た」から、上級者になれたんだろうけど)。
それはどういうことかと言うと、腕力を使わない方が「ヘッドが走る」ことに気がつき、さらにヘッドを走らせる為にはどこをどう使えばいいかを彼等なりにそれぞれ追求して、彼等なりの方法でクラブヘッドを走らせる事が出来る。
それを彼等なりの言葉で言うと、「腰を速く切る」だとか、「右足の蹴り」だとか、「肩のターン」だとか、「ゆるゆるグリップ」だとか、「シャフトを長くする」だとか...
「腕力を鍛える」という人はまずいない。
飛ばす為に腕力を使うというのは、実に自然でシンプルで簡単で楽で当たったときの快感もあるのだけれど、実はそれを我慢して「身体の他の部分を上手く使ってヘッドを走らせる」というのがゴルフスイングの真実...

多分その「身体の他の部分を使って」という所には、それぞれのゴルファーに合った方法というのがあってそれを見つけるのが一番大事な事かも知れない。
「ここは飛ばす」と思った時に、ある人は「テークバックをいつもより大きく深く」なんて言うし、「ある人はトップから思い切り腰を左に回す」って言うし、ある人は「いつもよりゆっくりしたリズムで」と言うし、ある人は「いつもより小さめなバックスイングでただ身体の回転スピードを上げる」なんて言うし...
ヘッドスピードをいつもより上げようと思うだけで、これだけそれぞれのイメージが違う。
自分なりのクラブヘッドの走らせ方を探すのが飛ばしのコツとでも言う事だろうと思う。

自分に関して言えば...「飛ばそう」と思っただけで、ミスをしてしまう(笑)。
だから、「飛ばしたい」という本音をいかにして隠して(騙して)飛ばすスイングが出来るかが勝負(笑)。

スイングに入る時に「俺は飛ばしたいなんて思ってないさ」って独り言を言って、打ったあと「実は飛ばしたかったんだよねえ」なんて呟ければ大成功。