「ゴルフは幻惑のゲームだ。『自分には上手く出来ない』とわかるのに四十年近くかかってしまったんだから」...テッド・レイ。
テッド・レイは英国出身のプロゴルファーで、ハリー・バードン等当時の3巨頭の陰に隠れた存在ではあるが体重200ポンドを越える巨漢で、当時の英国一番のロングヒッターだった。
1912年の全英オープン、1920年の全米オープンに勝っている。
英米両オープンに優勝したのはハリー・バードンに次いで二人目。
全米オープンに優勝したのは43歳の時で、これは史上最年長優勝記録となった。
古ぼけた帽子をかぶり、常にパイプをくわえてプレーするユニークなスタイルのゴルファーで、当時としては驚く程の飛ばし屋だった。
その代わりによく曲がりもしたが、それを絶妙のリカバリーで切り抜けた、アイアンの名手でもあったという。
そんな名手の言葉がこれ。
飛ばし屋でアイアンショットも上手いレイだが、当時の3巨頭ハリー・バードン、ジェームズ・ブレード、J・H・テイラーの陰に隠れた存在であった為に、彼等を越えるべくずっと努力は続けた人物だった(それが全米オープンの最年長優勝記録となる訳だが..)。
その彼にして40年もたってやっと「自分はゴルフが上手くプレー出来ない」ということを悟るんだから...ゴルフってのは何と業の深いゲームなんだろう。
我々なんか、ゴルフ始めたときから「出来ない』ってことばかり経験してるってのに。
これはつまり、下手なヤツ程すぐ「わかる」、上手くなる程「わかんね~」ってことかな(笑)。
我々のようなヘボゴルファーは、しょっちゅう「わかって」開眼しちゃあすぐに絶望と後悔の海に投げ出されるのが当たり前だからなあ。
でもそれだからこそ逆に、我々はゴルフに熱中するとず~ッと長い間ゴールなんか見えない深い飽きのこない冒険と探索の旅を楽しめる、とも言えるんだろう。
どんなゴルファーだって、練習すれば自分が上手くなる手応えを感じる事が出来るし、ラウンドすればどこかで未来につながる希望のかけらを発見する事が出来る。
夢や妄想の実現は実際のラウンドではほぼ100%叶わないけど、それでもへこたれないくらいの面白さや可能性を感じる事が出来る。
本当にテッド・レイの言う通りだろう事はわかっているけれど、我々は根拠の無い自信と誇大妄想に吊り下げられた夢によって、明日もまた「希望の一歩」を踏み出すだろう。
「あんなこと」や「こんなこと」をしてみれば上手くいくかも知れない。
「ここを治して」、「あそこを変えて」、ならいけるかも。
いやいや、道具を替えればばっちりさ。
いやいや、あれはコースが悪かった、コースが良ければ上手くいく。
なんてね。
諦めちゃったら、おしまいさ。
...せっかくの遊びが楽しめない。