ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ランクルでゴルフを始めると...

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1985年頃だったか、「山と渓谷」誌などで仕事をしていた時に、偶然な出会いからゴルフダイジェストの仕事を始めるようになった。

当時は勿論ゴルフなんてした事も無く、将来ゴルフをやりたいなんて気持ちも全く無かった。
むしろ、あんなものは絶対にやりたくない、くらいに思っていた「遊び」の代表だった。
それが仕事としてイラストを描き始めると、自分でプレーを始めない事にはどうにもならない状態になった。
それに、当時の編集長に誘われた事もあって、半分嫌々始めたゴルフ...結果は、当然「即ハマり」。
こんな面白いゲーム・スポーツがあったのか、と。

当時は仕事がらみでラウンドする事がほとんどで、そのために無料やメンバーフィーでプレーする事が多く、今にして思えばかなりの高級コースにも行く事が出来た。

そして、当然コースに行くのはランクルBJ44で。
...しかし今と違って当時の常識は、ランクルBJ44のような4x4は「乗用車」のうちには入っていなかった。
そのためにランクルでゴルフ場に行くと、とんでもない目によくあった。

例えば、その時は取材のためにGDの編集者を助手席に乗せて行った、某有名コース。
早めの時間にコースに到着して、コース入り口を入ろうとすると門番の男性に止められた。
左側を指差して、そっちへ回れと言う。
その指差す方向に進んで行くと、ついたのはコース管理棟。
工事車両が止まっている中に到着。
すぐにUターンして門に戻ると、門番はまた「何故戻って来た?」、と...ここで、助手席の編集者が切れた。
「ゴルフしに来たのに、なんで管理棟に行かなくちゃいけないんだ!」。
...やっと、門番の人もこのランクルが「工事車両」ではないと気がついた。
...しばらくの間、その編集者の怒りは収まらず、とばっちりでこっちまで「大体こんな車でゴルフ場に来るからいけないんだ」...だって。

まあ、その怒りは冗談半分だったんだけど、自分が一番腹立ったのはI県の「名門」と呼ばれるゴルフ場に行った時の事。
自分がメンバーになっているコンペ参加のために行ったのだが、早めについたので空いていた正面玄関に近い駐車場にランクルを停めた。
その場所にはベンツやらポルシェやら、なんだか高そうな車が停まっていて、正面の入り口からよく見える場所だった。
そこに止めた車から小物を持って出ようとしていたら、玄関からきちんと背広を着た中年の男性が走って来た。
胸の名札には「副支配人」と書いてある。
で、「すみませんが、その車は奥の方に停めてください」
「え?ここメンバー専用だった?」
「いえ、違いますが...」
ムカッと来たが、コンペに来て喧嘩する事も無いと、黙って奥の方の玄関から見えない場所に移動した...やはり、ランクルは「現場作業車」であって、「乗用車」としては認知されていなかった時代の話。
「名門コースの正面に、汚いトラックを停められちゃあ堪らない」、という気持ちだったんだろう。

そして多かったのが、コースについても誰もキャディーバッグを受け取りに来ない事。
他の「乗用車」が着くと、先を争って荷物を受け取りに行く係の人が、ランクルを停めて荷物を降ろしていても遠巻きに見ているだけ。
「あれはゴルフをしに来たんだろうか?」
「工事の人が大きな工具を下ろしているのか?」
「こんなとこに停めちゃダメだって言って来ようか?」
なんて会話をしているんだろう...一向にこちらに近づいて来ない。
まあ、そういうのには慣れてしまって、黙って自分でキャディーバッグを持って行く事にしていたけど。

そして面白かった事がもう一つ。
今では週刊朝日の名編集長となっているY氏は、初めゴルフダイジェストに就職していた。
その彼が新人の頃、いろいろとユニークな企画を出す男として評判になっていた。
その一つの企画が、「変わった車でゴルフに行く人達」(のような内容だった)。
そしてその一例として、「工事用車両のランクルでゴルフ行く人」みたいな趣旨で写真入りで記事になった。
ちょっとわかり難いので、(本当はそんな事してないんだけれど)トップのキャリアーにキャディーバッグを写真でわかるように乗っけて、掲載された。
...そのくらい、ごついランクルでゴルフに行く事が珍しかった時代、だったという事。

今では、ごつい(外見はそう見える)4x4でゴルフ場に行ったって普通だろうし、ハマーなんて馬鹿でかい4x4にも趣味でのる人が増えている時代、こんな事がつい20数年前にはあったんだって信じられないだろう。

それだけ、この時代のランクルは外見だけではなく中身もハードで、好きで乗る人は少なかった。

...道で、同じような4x4に出会う度にみんな挨拶していた時代の、懐かしいエピソード。