「パットはヘッドではなく、シャフトで打て!」...村上隆。
村上隆は、1975年に「日本プロマッチプレー」「日本プロ」「日本オープン」「日本シリーズ」と、「日本」を刊した大タイトルを全て勝ち、日本初の「年間グランドスラマー」となったゴルファー。
青木、尾崎、それに中島と続く、長く時代を背負ったスーパースター達の時代に、短い時間割り込んで咲いた渋いヒーロー。
当時圧倒的な飛距離を誇った尾崎・青木に対して、自分流の安定した技とパットで勝負を挑んだ勝負師でもあった。
この言葉、村上隆のパットの極意だという。
普通、ゴルファーはパットを打つ時には、ラインを決めたあとはボールとヘッドを集中して見る。
そして、ヘッドの軌道を考えてスイングする...インサイドインだったり、インサイドアウトだったり、真っすぐストレートに、だったり...それぞれに信じるストロークを行おうとする。
そして、ボールをヒットした時に、そのヘッドとボールの当たった感触を気にする。
堅い、柔らかい、球離れが早い、遅い、出だしがイメージ通りか、軽いか重いか、インサートの感触が、あるいはボールが堅いか柔らかいか...
どうかすると、パットが苦手な人程、そういう事に余計にこだわる傾向がある。
自分のパットが下手なのを道具のせいにして、「自分にぴったり合った、必ず入る魔法のパターがあるはずだ」と信じているみたいに。
村上隆は、そういう風にヘッドとかボールに意識を集中すると、どうしてもインパクトの瞬間に注意が行ってしまって、肝心のストロークのリズムやタイミングが狂ってしまう、と言っている。
それが「シャフト」に注意を向けるとどうなるか。
「シャフトで打つ」というイメージを持つと、ヘッドの事が頭から消えるので、手首を勝手に動かそうとしないでシャフトと腕を一体にして動かす意識になる。
そうすると、肩を支点にした振り子運動のようなイメージになり、リズムとタイミングを一定に合わせやすい。
「インパクト」の意識が無くなり、「ストローク」の意識になるのだ。
自然にゆっくりとしたストロークになり、とんでもないショートとかオーバーのパットにはならなくなる。
市販のパターの「売り」は、ヘッドの材質とかインサートの材質とか、あるいはフェースのバランスの位置だとか重心深度だとか...
あるいはフェースの平面性だとか、色だとか、名設計家の名前とか...あるいは有名なプロが使った、というだけの話とか...「付加価値」の値段が沢山ついてくる。
パットが苦手な人だったら、一度そんな事すっかり忘れてみよう。
どんなパターだってかまわない..「シャフトで打つ」という意識があればいい。
大事なのはゆっくりとしたリズムとストローク。
決して、付加価値のついた「高いパター」が入る訳じゃない。
パットが下手な人程高いパターを持っている、なんておかしいぞ。
アメ横の2000円のパターでメジャーに勝った、ゲーリー・プレーヤーの話だってあるんだから。