ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

「遅い」人

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今まで沢山の「スロープレーヤー」とラウンドすることはあった。
そういうスロープレーヤーというのは、大概「何か」遅い理由があった。

まず多いのが、「儀式」をする人。
,,,ちょっと前に描いた「会話する人」のようなタイプ。
それから、「チェックする人」。
...これは、真剣にゴルフに取り組み過ぎるが故に、レッスン書やらコーチの言った事を守ろうとして、その気になった全てを完璧にチェックしようとするタイプ。
それから「決断出来ない人」。
...これは、何を使うか、どう攻めるかの決断がすぐ出来なくて、ただ迷っているため。

等々、一応その遅い理由がわかるのだけど、少し前のオープンコンペで一緒になった60代の男性は違っていた。
その男は、俺が出会った中でも「特別に」遅いゴルファーだった。
,,,下手ではない、飛ばないがきちんとボールを捉え、ちゃんと70台で回ったほど上手かった。

だが、同伴競技者の他の3人は、みんな90から100叩きすることとなった。
ともかく全てが遅いのだ。
歩くスピードは、80のおばあさんの散歩並みに遅く、それなのにカートに乗りたがらない。
一番飛ばないのに、ボールのところにクラブを持たずに歩いて行き、そこでゆっくり考えておもむろにカートに行ってクラブを取る。
クラブを持ってボールのところにたどり着くと、暫くボールと打ちたいところを眺めて考える、それからゆっくりアドレスに入るが、それがまたスローモーションのようにゆーーーーっくりとした動きで、やっと打つかと思うと、またアドレスを解いたりする。
そして、打ち終わった後も、その場でボールの行方を見ていて、落ち場所を見てからまた考えている。

なんと、3ホール目のロングで一ホール空いてしまい、後ろの組を待たせたあげくに、カートに「急いでくれ」との無線が入る。
ショートホールではマーシャルのカートがくっつく。
マーシャルのカートの前で、その男はオナーのために(悔しいことにその男にずっとオナーを取られていた)その動作を繰り返す。
他の3人は、一ホール目からその男の異常な遅さに気がついて、自分の番になると後ろを気にしてあわてて打つようになった。
他の3人が打つ時間を合わせたより何倍も遅いその男のために、俺も他の二人もその男が打ったら、殆ど同時に打つようにした。
多少前でも、その男がカートにゆーーーっくりと歩いていく間に、「お先に」と言って打つようにした。

途中で、何度も入る「急いで下さい」という無線に、その男が「私たち、遅くはありませんよね?」なんて言うから、3人口を合わせて「遅いです!」と言ったんだけど、その男は全く自分のせいだとは思っていないようだった。

何でも、年間150回はゴルフをするそうだ。
世界中の国でゴルフをしてきたそうだ...勿論、セントアンドリュースをはじめとするイギリスやアイルランドのコースでも。
...その間に、一度もスロープレーを指摘されたことはなかったんだろうか?
誰もその男に注意することはなかったんだろうか?

自分の仕事のことは、聞いても一切話さなかったが、言葉の端はしに「偉い」人のような様子が伺われる。
接待されて行ってやった、というようなニュアンスが感じられる。
クラブも最新のを「一式」という感じで揃えている。
帰りの車も高級車。

そんな男のために調子をボロボロにした俺が未熟なんだけれど、2ホール目からあんなに後ろの組と進行時間を気にしたラウンドは無かった。
途中で、3ホール近く前の組に置いて行かれたラウンドも、生まれて初めて。
...スコアで負けて、こんなに腹が立ったのも久しぶり。