ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

キャディーバッグ担いで歩いて来たさ...

 

 

親がゴルフをやっていた、とか千円札を丸めてタバコに火をつけていた、なんての以外の日本人ほとんどの人が「ゴルフ」なんてのには縁がなかった時代、偶然仕事絡みとかでゴルフをやらざるを得なくなった人のお話。

口じゃ「あんな金持ちジジーたちがやってる棒振り遊び、俺たちには関係ねーよ」なんて言いながら、あのスキーのブームの時に「俺にはブルジョアの遊びなんて縁がねえよ」なんてバカにしていた人達ほど夢中になったのと同じ事が起きつつあった、「狂乱のバブル前」のお話。

 

草野球なんかで無理やり体力を燃やしていた「まだ終わらない情熱の燻り」が、「全力でゴルフができる」環境になった時に喜んで燃え上がったのは当然だっと思う。
もちろんこれからバブルが始まろうという時代、個人で参加するには敷居が高かったけど仕事がらみで「上司に無理やり」とか「営業の相手とのおつきあいで必要」なんて口実で「経費」に助けてもらってコースデビューを果たすことが多くなった。
(上司も「会社の金」でゴルフをしたかったので、部下はそれに喜んで巻き込まれた形だった。)
道具が借り物であったりお下がりであっても、多少の運動能力さえあったら、最初のラウンド体験でほぼ9割の人が以後「ゴルフ狂」になった。

 

すると、次は少ない小遣いや貯金をやりくりして「自分の道具」を揃えることになる。
面白さに比例して、ゴルフってやつは揃えるべき道具や小物が実に多い。
それにプラスして服装や靴やボールまで...その中でキャディーバッグってやつは、道具の全てを入れておく「入れ物」なんだけど、ほとんどの人間はクラブやボールや服装に先に金をかけて「立派な」キャディーバッグを買う金が残っていない。
で、結局ディスカウントショップのゴルフ売り場の片隅にに置かれている「特売品で我慢することになる,,,厚手のビニールで作られた「いかにも」の安物キャディーバッグだ。
本人はこれから「やれる」ゴルフに夢中で、買ったキャディーバッグなんか大して気にしないが、多くはすぐにジッパーが壊れてちゃんと閉まらない状態になる粗悪品だった。

それでも、始めたばかりで夢中なゴルファーは3年以上は使う...そして100を切れるようになると、ちょっと「上級者」の使うキャディーバッグが気になってくる。
自分のビニールのバッグに比べて、口径の大きな皮製のバッグは、チャックもポケットもとっても立派で「格」の違いを見せつける...が、ショップに行ってそのレベルのバッグを見ると自分の予算とは一桁違うし、そんな金があったら自分はもっと飛ぶドライバーやもっと止まるウェッジを買ってしまう、と言う事でそのまま時間が過ぎて行く。

 

が、会社主催の大きなコンペで新ペリアのハンデに恵まれて「優勝」なんて事も、長い人生の途中で起こったりする。
多分人生のほとんどの運を使い果たした結果なんだろうけど、優勝商品があの欲しかった大口径で本革製の「プロモデル」のバッグだったりして。
定価の札を見ると10万円をはるかに超えていたりして...犯罪者の様にビクビクしながら、思い切りニヤつきながら車に積み込む。


そんな思い出のプロモデルのキャディバッグも、10年も使うとあちこち塗装が剥げたり傷んでくる...おまけにバブルが弾けて時間も経って、セルフのカートゴルフが中心になると4つのキャディーバッグを積むのに邪魔になる大きなバッグはみんなに疎まれるようになる。

そこで2万円も出せば買えるような8インチくらいの地味なバックに買い換えて、ひっそり地味にプレーを楽しむ事にする。
ひところ目指した「シングルゴルファー」への道はとっくに諦めて、プレー自体に楽しみが移っている。

 

年をとるにつれて年々飛ばなくなり、あちこちが痛み出し...稼ぎが増えないのをずっと続く不景気の安値プレーに助けられ、月に2〜3度のプレーが生き甲斐の人生になる。

 

定年を迎える頃にはゴルフ仲間も減ってきて、年金暮らしじゃゴルフは無理となんとか月1のゴルフにまで妥協して...それもダメなら格安コースのハーフラウンドにも行ってみて...自分のゴルフには、ハーフセットで十分なんだと悟りを開く。

そう、フルセットに最新クラブ(と行っても2〜3年遅れではあったけど)で頑張った日々と、今の脱力ハーフセットプレーのスコアが変わらないのが、彼のゴルフの真実の姿で答えで現実だった(最も最近の彼はスコアもつけていないんだけど)。

 

なので彼のゴルフのキャディーバッグ遍歴は、ハーフセットをライトウェイトスタンドバッグに入れてポンポンと打っていくゴルフ。
お手軽だけど...実は奥が深い。

わかっているのは彼自身だけなんだけど、だからゴルフはやめられない。

 


結構近いうちの生涯最高のスコアも出そうな気がしている。