ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

現金収入

 

さてさて、ここ数年俺が奥さん以外とのラウンドを楽しんでるのは、ほぼ9割一人参加のオープンコンペだ。
使えるお金の関係と、ヒッコリークラブで遊べるコースという条件だと、大体が関東北部のプレーフィーが1万円以下のコースに限られる。
それでも大体うちから100キロ前後の距離になり、プレーフィー以外にも約5千円円のガソリン代やコンビニでの弁当代がかかる。
大体1回のゴルフで1万5千円というところが、俺の「ゴルフ遊び代」だ。

この金額が高いか安いか...当然「安過ぎる」という人が多いだろうけど、65歳以上で年金で生活している人達にとっては、これでも大きな出費となる。
何もかもが値上がりしつつある最近の生活事情からも、負担感は大きい。
この前書いた、年間150ラウンドや100ラウンドするようなゴルファーは、そういうゴルフライフを送るべく若い時代から準備していた見事な人達なんだけど...そういう人は少数派だ。

一緒にラウンドする人の多くは、「年金はそっくり奥さんに渡しています」とか、「小遣いは月3万円くらいでそれを貯金から下ろしながら遊んでいます」なんて自分のゴルフライフを語る。
普通、定年の60歳くらいから5年くらいはそれまで勤めていた会社関係の仕事を「年間契約」という形で、給料を減らしながらも貰い続けることが出来るので、ゴルフをやる事に不安はなかったと言う(もちろん「健康であること」と言う前提はつくけれど)。

しかし、問題は70歳近くなって、勤めていた会社との縁が切れてからだ。
先に書いたように年金をもらい始めても、国民年金はとても生活することさえままならない「雀の涙」の金額。
会社によって貰える厚生年金や、その他諸々の年金類の総額で生活からゴルフまで楽しむのは、ほとんどの人にはかなり厳しい。
そこで奥さんがパートで働いたり、本人もバイトやパートを探して、少しでも現金収入を増やそうとする人が大多数だろう。
...だが、探すと特別なスキルがない限り、70前後のジジーに出来るようなバイト・パートは少ない。
また、臨時のバイトやパートであっても、それなりのスケジュールの束縛と責任が発生し、体調管理・生活リズムも考えて、結局以前の会社勤めの「劣化版」の様な暮らしが続くことになる。
安いからといって、天気の良い日に急に「ゴルフがしたい」なんて思っても、会社勤めの時と同じにバイト・パートが休みの日にしか出来ないって訳だ。

平日の天気の良い日を週間天気予報で探して、安くのんびりとゴルフを楽しむには、ゴルフ用の現金収入がないと難しい、というのが現実だ。

そんな時に、オープンコンペで一緒になった人とのお昼の会話で、「私は年金は全部奥さんに渡しています。」と言った人が続けて「ゴルフ用には私はいい現金収入がありますので」と語った言葉に、そのテーブルの全員が「へえ?」という顔をした。

その男は得意げに、「みなさん、あの工事現場の一方通行の旗振りを見たことがあるでしょう?」。
「あれって、立ちっぱなしは辛いけど、1日やると現金で1万円手渡しなんですよ」
「それを月に4〜5日やると、月4回のゴルフができるわけです」「私のウチはこの近所なので、30分も走らないで50以上のコースがりますし」...


へえ、知らなかった。
あの交通整理の仕事って、1日でも現金でくれるバイトなんだ...
まあ、暑い日や寒い日は大変そうだけど...

と、一人の男がこの話に喰いついた。
「そのバイトって、どこに聞けば紹介してくれるんです?」
「職安なんかじゃ教えてくれませんよね?」
「私も、その仕事をやりたいです!」


と、そのバイトの話をしていた男性は、「いや〜、あれは私のコネなんで...」
「今まで何回もそのバイトやっているので、工事会社と信頼関係がありますし..」
と、そのバイトの窓口のことを絶対に言わない。

食い下がる男性に、ついに本音を言った...「いや、最近そのバイトに競争が激しくなって...後腐れなく1日で現金がもらえるバイトなので、私も手放したくないので詳しいことは教えられません...すみません」
「それに、もし若い人が来たら、仕事取られちゃうんでヒヤヒヤしてるんですよ。」


1日で現金1万円...たしかに「ゴルフ代を稼ぐ」と考えれば、いいバイトだよな。
いつでもある仕事じゃないんだろうけど、ゴルフやらない時にマメにバイトして貯めて置くって手もあるし。


年間150ラウンド平気でするのもジジーのゴルフ。
バイトで稼いだ1万円札を、一枚握りしめて楽しむのもジジーのゴルフ。

ユニフォームとカッパを着込んで、無線通りに旗を振って交通整理するのもそれなりにきつい仕事の筈だけど、ゴルフ楽しむ為に1日頑張るオヤジの姿も立派な「ゴルフな人々」の姿。
カッコ悪くてカッコいい...「無名ゴルファーここにあり」、だよな。