ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

その正体と大義名分...嘘つきだらけの世界

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この男が、映画「指輪物語」に出てくる生き物とそっくりだとの噂があった。
でも流石に、世界の大国の代表者にそれは失礼だろうと、口に出して言う人間は多くは無かった。

悪い評判はあったが、これだけ情報の開かれた時代の政治家で、それほど愚かな人物ではないだろうと俺は心の何処かで思っていた。
(まあ、世界のどこかの小さな新興国の独裁者なんかにはいるかもしれないけど)

一つの思想なり政治体制の側からは「悪の大国」と言われていようと、それなりの大国の人民の心や政治システムを円滑に動かして行くには、やはりその人物に備わった知性や人望が必要なはずだから、と思っていた。

しかし今回、事を起こしてからのこの男の言葉には、まるでヤクザ者のような脅しと勝手な理屈しか聞こえて来ない。
曰く、「他の奴が手を出すなら、核を使うから覚悟しろ」とか、「あの時代には俺の国の領土だったんだ」とか。
...この男が、「元秘密警察出身だ」とか、「他の有力者の弱みを掴んでのし上がって来た」とか、「抵抗勢力は恐怖で押さえつけ」、「それで聞かなければ力で排除することを躊躇しない」、とか言われて来たのはよくある「都市伝説」の類で、実際には国を統率する資質があって力をつけて来た人間だと思っていた。
だが、今になって彼の発する言葉はそうした「伝説」が本当だったってことを実感させるものばかり。
邪魔な政治家やジャーナリストを暗殺し粛清し、裏金を溜め込み、約束を守らず、隙を見つければつけ込んで脅し抹殺する。
これだけの本性が現れてくると、流石に我が国の育ちの良い甘い政治家たちでは歯が立たないだろうと、誰もが理解できただろう。
この男の「交渉」とは自分が引いたり損することははじめから全く含まれず、その会談はただ自分のいうことを相手に飲ませるだけの強盗の強談判だったのだ。
いかにも大義名分がありそうなその言葉の「かって、ここは我が国の領土だったから」なんて言い草は、まともに自分に返ってくるブーメランだ。
「いつの時代?」によって、「そこは、ローマ帝国に...」から「いや、そこはモンゴルの...」とか、「オスマントルコの...」とか「漢の...」とか「秦の..」とか、近けりゃ「千島列島や樺太の...」まで...簡単に自分の都合の良い歴史を主張するもんじゃない。

この男の勝手な言い分を発表する姿は、まさに指輪物語のあの生き物の姿そっくり...ただ現実世界でのこの生き物は強大な武力を持ってしまっている...観客は笑うこともできずに、眉間にしわ寄せて黙って身をすくめるしかないのだ。

...自国民が犠牲になる核戦争が怖くて、世界の警察官を自認していた国々は暴漢の脅しにみんなヘタれている。
こうなると結局、力を持ってない国は強盗・暴漢の言い成りになるしかないのか...世界は、今みんなそう思っている。
もし、自分の恋人や家族が、圧倒的な武力を持った人間に襲われた時、無抵抗でじっと耐えるのが正しいことだろうか?
無抵抗でみんな殺されるなら、自分も出来る限りの武力を持って自爆・相打ち覚悟で精一杯の抵抗をして、家族や恋人を最後まで守るべきだろう。

という理屈で、これからは核兵器を持つ国が増えるのは確実だ。
何より、核兵器を廃棄すればいざという時には自分たちが守る、という嘘をついた大国の罪は大きい。

こういう愚かな独裁国家が現実に暴挙に出た時に、他の大国の保護は全くあてにならず、自分たちの国は自分で守るしかない...って事を身に染みて理解した世界の国が、それぞれに核を持とうとする事をどの国が止められるんだろう?

この恐怖のみが力の根源である軍人上がりの愚かな政治家は、最後のパンドラの箱を開けてしまった。
「結局、暴力には自分の暴力で対抗するしかない...だから、どの国にも核が必要だ」って言う「真実」の。