ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

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掘っくり返し屋と胡桃の木『ヒッコリーゴルフのイベントについて』

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筆者がヒッコリーゴルファーである事は、大叩き氏の文からお気付きの方が居られる事だろう。
2009年頃から本格的にやっているので今のヒッコリーゴルフ界の流れの中では古株になり、大きなイベントにも皆勤賞ではないが、2014年から大半のモノに出場している。
現在のヒッコリーゴルフのイベントは用具販売等をしているヒッコリーゴルフショップ(Cuthbert & Co.)代表であるアレックス・ブルース氏の活動から端を発し、先年発足したヒッコリーゴルフ協会(JHGA、ブルース氏も理事の一人である)や協賛のコース・倶楽部が開催をするようになって来ているが、どんな物が在るのか。

この場を貸して下さっている大叩き氏は、そういうイベントに参加されないスタイルのヒッコリーゴルフを愉しまれている故、ヒッコリーイベントに興味を持たれる方や、腕前を図りかねている草の根派の方々のお役に立つやもしれないので、ちょっと紹介をしてみようと思う。

現代ヒッコリーイベントの源流は2013年の秋発足し、毎年春・秋の二回軽井沢において開催される、作家の阿川佐和子氏をMCとしたイベント『阿川佐和子トロフィー(阿川杯)』である。
 最初の2~3年は、春は晴山ゴルフ場、秋は軽井沢プリンスホテルゴルフコースで行われていたが、近年は前者で春秋行われることが多く、前夜の食事会も行われている。
※なお阿川氏のスケジュールが詰まる際や荒天の際は中止になることがある。

試合方式は男子の部、女子の部に分かれた9Hのステーブルフォード競技で、そこにハンディに合わせたポイントを加算して競うほか、ストレートドライブ賞、ニアピン賞、ベストドレッサー賞等の各賞が用意されて、皆が愉しめる様になっており。加えて会場となる晴山ゴルフ場インコースは2700yd台(アウトは2600yd台)と短めかつ、レイアウトもフラットで開けているので、ヒッコリーゴルフ初心者にはもってこいの造りになっている。
 なお、阿川杯は、ヒッコリーゴルフを通じた交流が主体の親睦イベントであり、スコアにとらわれず、人との出会いや交流を大事にして、互いのショットを称え合いながらプレーを愉しむ事が重要なイベントである。

惜しむべくは、このイベントは現在参加資格が出場経験者とその紹介者がメインの方針であることと、新型コロナ流行により2020年から休止にあり、2021年秋再開を目指していた際に第五波が来てまた延期となってしまっている。再開はオミクロン株の動静と三度目のワクチン接種開始次第で在ろう。


阿川杯以降2016~17年時に同イベントに関わった方らにより関東と軽井沢で幾つかの中小規模イベントが行われてきたが、現在は関西で二つの大競技(2020年及び21年からJHGA主催)、が行われている。
まず一つが日本最初のゴルフ倶楽部、神戸GCで行われる日本ヒッコリーOP(Jaguar Japan Hickory Open Golf Championship)。発足は2018年で4月に行われる。
※2020~21年のコロナ流行下では二年連続で秋に延期している

この大会は日本最古のコース・倶楽部たる神戸GC(1929年の2ホール変更と30年代のグラスグリーン張替え、戦後の整地以外はレイアウトが殆どそのままである)でヒッコリーゴルフを行う事は非常に意義のある事が骨子として在り。神戸GCのご理解ご賛同に支えられている。
筆者がJGAミュージアム委員氏から訊いた話だと、2016年頃に氏が神戸GC役員方との歓談の中で、友人であるブルース氏らの活動を紹介された所から端を発しているという。

競技は男女グロス部門のほか、男女・シニア・ジュニア各ネット部門、ベストドレッサー、ニアピン賞があり、優勝者は毎年秋にスコットランドで行われる世界選手権の参加費と旅費の一部が免除される。
また第四回からスポンサーのジャガー・ジャパンからホールインワン賞(ジャガーの貸し出し)の提供あり

競技はレギュラーティ(3851yd)、レディスティから行われるが、パー数ではなく1920年代前半当時で換算した基準打数ボギー71で行うのが特徴である(手前味噌だが各ホールの制定には筆者が関わっている)。
このボギー数について“随分増やしたな”と思われる方も居るだろうが、現代のクラブでは山の上のショートコースとなってしまう神戸GCが、ヒッコリークラブとなると、グリーンに乗せるにはキャリーの在るロングアイアンやウッドのショット、そして外した場合にはハイピッチが必要となる、熟練プレーヤーでもこの71に近づく為に奮戦するタフなコースに変貌するのだ。
※これ迄の優勝スコアは70台半ば~前半、台風直撃下でアウト9Hに短縮し行われた2021年大会は35で同着優勝。

そして個人的な見解だが、ヒッコリークラブを持ってコースを歩く内に造成当時からフェアウェイに生える野草や野花、鬼芝に矮化した笹や、顔を出す埋められた大岩などから、六甲の自然とそれを切り開いた先人の情熱や苦労を追体験できるように思えてくる。
ヒッコリーゴルファーならば一度は御出場を。と筆者がお勧めする大会だ。

二つ目は2019年発足で1920年創立の鳴尾GCで行われるシーズン最終戦、日本ヒッコリープレーヤーズ選手権(Japan Hickory Players Championship、実質的な関西ヒッコリーOP、2020年はコロナ流行により休止し、今年12月9日に第二回開催)。
鳴尾GC会員にJHGA理事の方がおり、JHGA結成前からの氏による啓蒙・普及活動で同倶楽部はヒッコリーゴルフに大きな理解を持って下さっていて、2020年から行われているコース一般開放の催しの際にもヒッコリーゴルフ体験が行われている程だ。
こういった事から参加者も鳴尾の会員方を始めとする関西ゴルファーが多い。

試合方式はグロス部門・ネットスコアでのポイント(ステーブルフォード)部門、シニア部門、レディス部門で行われる。

1930年に造られた猪名川コースは現在も選手権が行われるコース故に中々ハードである。と云いたいが(実際そうであるのだが)。それは選手権でパーを切るゴルフをされる方らの話で、一般プレーヤーにとっての『ハード』はグリーン周り30yd圏内とパッティング、そしてバンカー脱出等の3打目以降で、それまでのストロークは許容範囲が大きく、5800yd台のホワイトティ(65歳以上だと5500yd台のゴールドティ)でパーオンを狙わないゴルフをして100切りが出来る方ならグロス部門でベスト10以内に入るだろう、各ホール5打のペースを少し切れるならば優勝争いが出来る。
※2021年度大会の男子グロス部門優勝スコアは86である

C.H・アリソンが採用し、鳴尾のハードさの所以である名物の砂壁式バンカーは砂のコンディションがホールによって違う事(フカフカであったりコンクリートの様に固まっている事が在る)、そして縁が微妙にオーバーハングしており、正しく打ち出されないとソコに留まり続けてしまう、また名物の高麗芝グリーンは傾斜と芝目を読んで臆さないパットが必要だ。
先のJHGA理事氏は非常に短いパターによるロフトを殺したヒッティングで安定したパットをされている他、バンカーのライによって二種類のニブリックを使い分けられているが、この事は攻略の参考になるやも知れない。

※なお、これら二つの大会では進行のため1ホール4オーバー以上となるとギブアップ扱いになり、スコアはそこでカンストする(なのでピックアップしても大丈夫だ)のが特徴である。

各大会情報についてはヒッコリーゴルフショップHP( HYPERLINK "https://hickorygolf.jp" https://hickorygolf.jpの方)に紹介ページがあるのでご興味のある方はチェックされてほしい


関西で大会がある一方、ここ数年間イベントの無かった関東で登場したのが、2020年秋から太平洋クラブ八千代コースが主催している各種イベントだ。
同地は太平洋クラブが経営下に置き2020年にリニューアルオープンしたコース。同社会長がヒッコリーゴルファーで同ジャンル普及に理解が深い方であることも関係し、距離が短めで徒歩スループレーの八千代コースはヒッコリーに向いたコースである。と宣伝に力を入れられ、春・秋のイベント、2021年から始まった月例会、そしてプロアマチャリティ等各種ヒッコリーイベントを開催し、現在国内ヒッコリーゴルフ界で年間当たりの競技イベントを一番行っており。年次の大競技も計画されている模様と、関東ヒッコリーゴルフ界の本拠地となっている。

コースはドングリの木の多い丘陵に造られ、ホールによっては窪地や登り坂が在るモノの大体フラットであるが、ヒッコリーゴルフに於いては上限レベルのティ(5800~6200yd台)でプレーが行われ、ハザードを超えるのに一定以上のキャリーのいるホールも在るので、その点ではかなりタフであり、男性ならば平均185~200yd以上のティショット乃至二打目の長物の捌きが攻略の要となってくる。

月例会は毎月第三金曜日に行われ、今のところ十人台の参加で競技派の方が多く、5800yd台のティから70台で廻る方も出てきている。
会員外の者も参加受け付けをしているので、ご興味のある方はヒッコリーゴルフショップHPの紹介ページないし太平洋クラブ八千代コースに問い合わせてみると良いだろう。

以上が現在行われている大形イベントであるが、この他に関西でも月例会を行う計画があり、またJHGA各支部主催の地区大会や小会も今後出て来るであろう。
各種イベントに携わってきたブルース氏が最近筆者に語った所では、
『阿川杯を始める際に“十人も参加者が在るだろうか”と不安があった』
そうだが、開始から8年強の間に幾つものイベントが出来、大競技を行うと定員丸々の参加者が集まる様になったのは慶ばしい事だ。
 筆者としても阿川杯以前に、海外のヒッコリーゴルフ事情を初期から知っていた前JGAミュージアム委員参与の故藤岡三樹臣氏(ゴルフ収集家協会々員でも知られた)から、日本では海外と比べて各コレクターの経済的・クラブの所蔵量的問題から、広めるには無理があるだろう。と云われていたのを振り返ると、今は発展へ向かう地点ではあるが、感慨深い。

ここに来るまではブルース氏とヒッコリーゴルフを愛する仲間達の奮闘と、その情熱を理解して下さった各倶楽部のご厚意について改めて明記しなければならない。
 
今後のヒッコリーイベントについての個人的見解・要望としては、競技系イベントだけでなく、阿川杯の様な初心者も熟練プレーヤーも愉しみやすい親睦イベントがこれから増えてくれることを願う。

最後に触れたいが、現在のヒッコリーゴルフの主流がヒッコリーゴルフショップから端を発しているので、その路線や集まる方々の層に戦前の国内ゴルフ界の様な面が在る事や、会場が歴史のあるコースの為諸々の経費が掛かってしまう事(これに就いては筆者も関西の方から毎回ご足労大変でしょうと気遣われる事が在る)は致し方ないかもしれない。
※海外でもヒッコリーゴルフに数タイプの層が出来ているのには留意したい

しかし、JHGAの方らも草の根派との壁や段差を、行き来や繋がりがし易いスロープに出来るよう考えられており、現在の黎明期から発展期へと移ろうとしている中で良い方向に変化していく事と筆者は信じている。
(コロナ下で見送り状態になっているがヒッコリーゴルフショップも“取っ掛かりやすい親睦的イベントを考えている”との事なので見通しは明るいだろう)

そしてこのジャンルを誹る方らが云う『集まっている面々はお高くとまって云々』というものは無い。という事を草の根合流派の一人として声を大にして言いたい。
 むしろゴルファーの数が少なく、会えば皆が知己・友人の様に付き合っていたヒッコリー時代の国内ゴルフ界同様、集まってきた同好の士との交流を大事にしている様に感じている。
ヒッコリーゴルフの源流には現代のゴルフでは薄まってしまった“それ”が間違いなく在ると筆者は信じており、イベントには競技で腕を競いたい方だけでなく、同ジャンルにおける繋がりを持たれたい方にもお越しを願いたい。

今回はいきなりヒッコリーゴルフのイベントについて書いたので、このジャンルのこまごまとした事を今後書いていけたらと思う。

                           ―了―
                       2021年12月13日記 
2022年1月6日改定

 

 

 

 

 

(この記事に関する文責並びに著作権は、松村信吾氏に所属します。)