ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

外出自粛の師走の日々に、つらつら思う

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ちょっと前の事、仕事から帰ってきた次女が「今日は驚いた...」としみじみ呟いた。
聞いてみると、休憩時間の同僚たちとの会話の中で「えもんかけ(衣紋掛け)」という言葉を出したら、誰もその意味がわからなかったんだと。
「え? そうなの?」と色々な人に聞いてみて、その言葉の意味がわかったのは50歳以上の人だけだったと言う。(今じゃその言葉は「ハンガー」で通じるんだとか。)

それを聞いて思い出したのは何かの本で見かけた、「ズボン」も「背広」も「ジーパン」も、今じゃ若い人の間では通用しない死語なんだって記事。
ついでに言えば、「パンツ」も俺たちジジーと若者じゃ意味が違うのは要注意。

うちの娘達は本を読むのが好きで、知り合いの編集者が驚くほどの量の本を普通に読んでいる。
「うちの娘なんかどんなに言っても本よりスマホなのに、どうして君の家の娘はそんなに本を読んでるの?」と聞かれると、思い当たる事は(というより本人から聞いたのだが)ひとつある。
それは、うちの奥さんが子供達が小さな時から寝るときに必ず本を読んであげていた事。
娘二人は毎晩それを聞くのが楽しみで、寝るときにはいつもワクワクしていたらしい。(でも、しょっちゅう奥さんが疲れて「寝落ち」するので、それが不満だったとか。)
俺も誕生日のお祝いや、何かの機会に絵本や童話を買って帰る事が多かったし。(が、それが原因で今では二人とも「時代遅れの変な娘」という評価になっているのは、凄く不満らしい。)

俺も最近、漫画で「律儀って言葉はもう使われていない」なんてことがテーマになっているのを見かけて、「そうなんだろうな」ってしみじみ思う。
スマホがほとんどの人間の「当たり前の道具」になると、当然その道具に合わせて全てが変化する。
スマホで流れる言葉は短くなり、略語になり、仲間内でしか通用しないような暗号になって行く。
そんな道具のやりとりに慣れていなければ、本などのから得た知識に基づいた言葉は、はるか古の人々の「古代語」の様に分類されて、やがて通用しなくなっていくんだろう。
そしてその言葉は、そこに含まれていた「細やかな心の動き」と共に、永久に消えていくんだろう。

今のどこかの首長が好きで連発する、英語だの流行り言葉などを含んだ簡単な耳障りだけ良い標語の類も、下手すりゃその言葉のママの単純軽薄な調子を単純軽薄な人間に「見せる」だけで終わってしまう。
そんなものは結局、「ああ、そんなことも言ってたかな」程度のすぐに忘れるスマホのお喋りとおんなじだ。

今じゃ「律儀で真面目で不器用で」なんて人間は、一言「古いなあ」で片付けられてしまう時代になっちまったらしい。
でも、そんなことで無理して「若さ」に媚びるのは、みっともないしシラけるし、似合わないし結局通じはしないもの...そんなことは俺たちが若い時代にだってあったことじゃない?


ジョークのつもりが通じなくって、辺りが凍りついた瞬間を自覚したよね?
偉くなったら、もっと大局を見る目に命をかけて...自分の言葉で喋ろうよ。
ね、どこかの偉い人。