ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

「民度」の墜落

f:id:ootataki02:20200731150239j:plain

思い出せばつい先日だ。
有り金入った財布を落として、流石にこれは出てこないだろうと諦めていた数日後、全く中身に手付かずで交番に届いたという事実(自分にとっちゃ大事件)...「こんなことは日本だからの出来事だ」「ああ、なんて日本人の民度は高いんだ」と感心したもんだった。

それが今では、武漢肺炎(世間じゃ「新型コロナ」とか「COVID-19」とか言われているけど)が、見事にその民度というのがどんだけ軽く儚いものだったか、ということを証明してくれた。

この肺炎にかかった、ということで差別を苦にして感染者が自殺して、家族は住んでいられずに故郷から出ていった、とか。
街に出ていた子供に里帰りさせて感染者が出た事で、その親が自殺した、とか。
県をまたいで出かけた旅先で、「他県ナンバーだから」と車に石を投げられた、とか。
首都圏からの旅行者が、飲食店の入場を断られた、施設の利用を断られた、果ては地元スーパーでの買い物まで断られた、とかの話は無数に聞いた。

感染者数の少なかった地方では、感染者への差別や村八分が特に強くて、感染者とわかると名前や住所を特定されて発表されたり、家に落書きされたり、挙げ句の果てに、一人の感染がわかっただけで家族や一族がその土地に住んでいられなくなる、とかのニュースが聞こえてくる。
ネットじゃ、この県では「病気になったら絶対に病院に行かない」とか「病気になったら遠い他県の病院に行く」「具合が悪くなったら隠れる」なんて事がジョーク混じりで言われているんだ、とか...「どこの国の話だよ」という状況だ。

実際に、今まで感染者がいなかったという県で最初の感染者がわかった時、ネットではこの人に「逃げろ!」「危険だ!」「県から出て行け!」「一族で避難しろ!」なんていう声があふれていたのが冗談とは思えないほどリアリティがあった。

その前に首都圏から引っ越してきた人を住まわせず、子供が生まれそうな里帰り女性の入院を断った県民...これが、あの東北大地震でも暴動を起こさず、じっと整然と耐えて忍んでいたあの県民と同じ人達なんだろうか、という違和感。

人に優しく、「お天道様が見ている」からと己の良心に従って行動する人たち、と認められ自認もしていた「民度の高い」人達は、どこに行ってしまったんだ?

旅人にも優しいと言われた地方の人たちが、この肺炎騒ぎでは他県ナンバーの車に石を投げ、首都圏の人は店に入るな、と言う。
石を投げられた方の人たちは、「あそこは意地悪で乱暴な人たちが住んでいるから二度と行かない」とか思うだろうし、入店お断りなんて言われた首都圏の人たちはこの騒ぎが落ち着いてももう再びそこに行くことは無いだろうし、その自分の受けた酷い体験を拡散しようとするだろう。
こんなことをしていたら、「負の連鎖」は止まらない。
民度」なんてのはどんどん下がって酷くなる。

...こんな肺炎のために、そこまで醜くなるのはやめようぜ。
「お天道様」の下、他人を攻撃するのは止めようぜ。
パニックを煽りまくるマスコミも悪いけど、それに乗せられる我々にも責任はある...最大限努力して情報を自分で集めて冷静になって見ようぜ。

俺は、治療を続ける奥さんの為に「絶対に」この肺炎にかかってはいけないのだが、同時に「デマやフェイク」に踊らせられないように少しづつ「用心」を重ねている。
「絶対」はないのだけど、極力危険には近づかないように、出来るだけ「そっと」生きている。


...おかげで太っちまったけど。