ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

便利と幸せ...

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ずっと昔広告イラストを描いていた頃には、少女漫画風に化粧品や生理用品のイラストを描いたこともあったり、雑誌の世界で描き始めた頃にも女性誌でやはり女性漫画家風のイラストを描いていたこともあった。
フリーのイラストレーターという立場では、食べて行く為に話があった仕事は全部やるという事が必要だった。
「仕事だから」という理由で、描いたこともないそうしたキャラのイラストを描くのも結構自分で楽しんでいた。
しかし、山渓からアウトドア関係、ゴルフ関係の新聞や雑誌からゴルフ関連の連載の仕事が入るようになると、そうした仕事をすることは無くなった。

しかし、最近のpixivの投稿イラストを見ていると、デジタルの最新アートソフトを駆使したたくさんの作家のイラストの描き込みの凄さと独特のエロスの世界のイラスト技術の素晴らしさに驚くことが多い。
以前は描こうと思えば俺もこういうのも描ける...と思っていたが、上のイラストはそれっぽいのを試しに30分ほどで描いて見たもの。
...ダメだ、いけません(笑)。
いかにも古い・らしい顔が描けない・あれ?どう描くんだっけ?の繰り返し・集中できずに飽きてくる(笑)。
うわあ、みんなすごい描き込みしてるんだ!・いやいや、俺にはこんな根気は無いや・色っぽいつったってロリには興味は無いから熟女の方がいい?・それはそれで難しいよ(笑)。

そういえば以前小説誌の挿絵を描いていた時の話。
ポルノ小説の挿絵の時に編集者に「あなたの絵はデッサンはちゃんとしてるし、綺麗だけども欲情を催さない」って指摘されてばかりだったっけ。
で、「トイレの落書きのような色っぽいのが欲しい」なんて言われて途方に暮れていた(笑)。

今のpixivの絵は、作者は若いのにみんな色っぽい。
とても俺は敵わない。
こうした作家たちがあの「コミケ」で皆売り切れになるような大きな商売をしているんだとか聞く...あの有名な夏コミではこうした人気作家たちの色っぽい奴が販売される日には、あの大きなビッグサイトの中に来場した男たちの汗と熱気で「雲」が湧いたとかは、普通のニュースにもなっていた!
(...まあ、匂いもあるらしいけど)

それにしても出版不況と言われる中で、こうした腕の良い優秀な同人誌系の作家たちは、基本同人誌の販売で生活しているというから時代が変わった...商業系の出版社のイラスト料はずっと値下がりしていて、今時は普通のフリーのイラストレーターとして食べて行くのは大変に難しいという。
出版社に新人を育てる余裕は無く、即戦力レベルの同人誌の優秀な作家をスカウトして仕事をする事が多いとか。
作家達も、今では商業誌に描くことは「目標」ではなくただのコミケで売る同人誌の宣伝目的だけと聞く。
そして作家達は、商業誌に使い潰されることを嫌っているのが普通なんだとか。

俺はいい時代にイラストレーターになったんだと思う。
仕事で描いている事が、勉強になり、腕をあげる事ができた。

現在はイラストの世界に限らず、社会の全てが「育てる」より「即戦力」だけしか求めないという、余裕のない時代になってしまったように思う。 
その原因は、「便利にはなっても人を幸せにはしない」と先見の明のある人が言っていた、「パソコンとネットが作り出した世界」なんだろうと俺は思っている(いまはスマートフォンも、だが)。


そして、多くの人がそう思ったとしても...多分もう後戻りはできない世界なんだという事...俺は、それが本当は恐ろしい。