ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

一炊の夢

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元は梅の農園であったと言う、梅林公園の梅はほぼ満開になった。

儚さと潔さが魅力の桜に対して、梅の花には清純・耐える強さ・高潔さ、なんて言葉がよく似合う。
これって、オレの若い時代の青春映画の女優達、吉永小百合和泉雅子なんかが演じた女学生や、かって憧れた年上の女学生...困難に対して胸を張り、キッと顔を上げ、唇を噛み締めてそれに立ち向かって行く美しい女性達のイメージに近い。
最近じゃあ、若い娘は可愛いのにだらしなく口をあけた顔が多いので(男の方がもっと多いか)、梅の花にイメージが重なるような女性は滅多に居ない。


そんな梅園の東屋の下。
日の当たる場所に、柱にもたれて日向ぼっこしている老人一人。
春が近いとは言えまだまだ寒い風の中、
厚手のコートを羽織ってすっかり着膨れして丸くなっていて。
陰になる背中は少し寒くても、陽射しは十分に身体を温めている。
居眠りをしているのか、身動きもせずにじっと座り続ける。


「まあ、よかったかな...」

そう言ったように思えた。
今こうして日溜まりの中で居眠りが出来る。
オレは、いい方だよな。
苦労ばっかりで先に逝っちまったヤツ
好きな時に日向ボッコも出来なくなったヤツ。
上を見ればきりがないけど、十分オレは幸せだよな。
背中が、そんな事を呟いているように見える。

もう、冬の陽射しは十分に彼を暖めていて、
満開の梅の花が、彼にいい夢を見せているような気がする。