ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

共に滅びて

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歩いた事の無い道を選んで歩く。
クネクネと新しい町並みと取り残された畑の間に続く道を辿る。

遠目に大木が枝を広げて立っているのが見える。
勇壮に...と見えたのが、近づくに連れて
それが滅びたあとも立ち尽くしている悽愴な姿だったと判る。

太く雄々しかったであろうその樹皮は、所々で剥け落ちている。
豪快に伸びていただろうその枝先は、皆傷つき折れてしまっている。

そしてその足下に、もう誰も住まなくなって久しい様な廃屋があった。
その屋根に、瓦を割って大きな枝が何本も落ちている。
かなり太い枝は、屋根の太い柱さえへし折ってしまっているようだ。
折れ曲がった屋根の所以外も、瓦はあちこちで落ちていて所々に小さな穴をあけている。
壁も崩れ、昔は農機具を置いていたような物置の棚が、斜めになって家の中に続いている。

何時頃だったんだろう。
この家が誰も住まなくなったのは?
何時頃だったんだろう。
この大木が枯れてしまったのは?


この廃屋と枯れた大木。
あまりに近くて、あまりに似ていて。
仲のいい家族、あるいはまだ醒めぬ前の恋人達、
あるいは忠犬とその飼い主...

どちらかが先に滅びれば、どちらかは残されて独り生きる気力を無くし。
あるいは共に同じ運命を感じ取ったり。

廃屋の周りに、それを隠すように木々が生い茂っている風景は何度も見たけど
共に同じように滅びた姿を晒しているのを見たのは初めてだ。


もう春の風の中、
枯れた大木が、共に生きた時代を夢見て
,,,まだ空を見上げている。