ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

遠くへ行きたい

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Tさんは、30代後半...間もなく40の声を聞く年齢。
東京郊外に住む親と離れて、独りで気軽なマンション暮らしも10年になる。
手につけた資格と技術のおかげで一応生活は安定しているが、土日が休めない仕事と男性に知り合う機会が少ない職場のために、結婚という話は最近はもう話題にもならない。
Tさん自身も、今の生活に不満はない。
欲を言えばもっと収入が欲しいが、まあ、今の所はこんなもんだろうと思っている。

...Tさんは土日に休めないために平日に二日間休みを取れるのだが、以前はこの平日の休みを持て余していた。
友人に平日休みの人がいないために、独りでぼんやり過ごす事が多かった。
そんな日々が続いていた時に、近所のゴルフ練習場の「ゴルフスクール生徒募集・初心者歓迎」のチラシを見かけた。
運動不足解消や気分転換に良いかもしれない、とそのスクールに入って、毎週二日間練習をするようになった。
はじめは上手く当たらなかったけど、当たり出すとどんどん熱中して行った。
1年ほどスクールを続けた後、その練習場のコンペでコースデビューした。

最初のスコアは、ハーフ70以上を叩く酷いものだったけど、ラウンド後の爽快感は他で経験した事のないものだった。
その練習場は毎月コンペをやっていたが、ほとんどは土・日曜日の開催で平日開催は年に4回だけだった。
2年ほどはラウンドはその年4回で我慢していたが、もっとラウンドしたい気持ちは強くなるばかりだった。
そして、3年目のある日さんざん迷った結果、平日開催しているオープンコンペに参加した。
そのオープンコンペは「レディースコンペ」という奴で、女性だけが対象のコンペ。
まだスコアは110を切れない状態だったが、レディースばかりのコンペはもっと叩く人も多かったので、ラウンドを楽しむには十分だった。

そうしてオープンコンペに独りで参加して楽しんでいるうちに、スコアも100前後でまとまり、周りを見る余裕ができ、賞品を手にする事も増え、ラウンドしたコースが増えて行った。
最近では、手軽に行ける近場のオープンコンペ開催コースは殆どラウンドした...すると、...「もっと違うコースを見たい。」
「回った事のないコースを回りたい。」
...そんな気持ちが強くなった。

それで、この1年は片道100キロ以上の行った事のないコースに行く事が多くなった。
遠い所は200キロ以上、そんなコースでも結構オープンコンペは開催している。
日帰りがきつい時は、主にコースのロッジに前日素泊まりするか、近所の民宿に泊まる。
そんなに裕福ではないので、良い旅館やホテルには泊まらない。
車中泊でも良いと思っているけど、さすがの女独りでの車中泊には踏み切れない。

しかし、こういうコースに行って判った事がある。
遠いコースには良いコースが多い。
高速代(なるべく使わない)やガソリン代を考えるとトータルでは少し高くなるけれど、回ってみて「ああ、損したな」なんてコースは少ない。
むしろ、特徴があって忘れられなくなるホールを持つコースが多いような気がする。
周りの風景が気持ち良かったり、四季の移ろいを身近に感じたり、珍しい鳥や小動物を見かけたり、行き帰りのドライブ中にも「あ!」と思うような景色に出会ったりする。

Tさんにとってのこの「ゴルフ+小旅行」は、仕事を気持ち良く続けるためのリフレッシュ行為になっているし、「今」を悔いなく生きるための原動力になっている。

今は、その気持ちは「もっと遠くへ!」

ゴルフをする気持ちが、「遠くへ行きたい」気持ちと一緒になっている。