ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ゴルフは80パーセントのメンタルと、20パーセントの筋力のゲームだ

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「ゴルフは80パーセントのメンタルと、20パーセントの筋力のゲームだ」...ベン・ホーガン。

...ああ、今もそうだったら良かったのに...
なんて思っている人が多くないだろうか?
実は自分がそう思っている。

ベン・ホーガンの時代、多分大多数のゴルファーはそうだった。
ゴルフ史に名を残すような、若くして大きな試合に勝ったゴルファー達も、筋力というよりは精神力・メンタルな部分を自分なりに鍛えて行って栄誉を勝ち取ったはずだった。
そして、だからこそ既に中年の域に入ったベテランゴルファー達でも、そうした若いゴルファーを迎え撃って名勝負を繰り広げていけたのだ。

しかし、そんな時代はタイガー・ウッズの登場によって変わって行った。
アスリートとして、他のスポーツをやっても一流になり得たような筋力を持って、数々の勝利を重ねて行ったタイガー・ウッズ
「メンタルなんて関係ない」そのパワーの前には、長い経験で磨かれたはずの「ベテラン」の技など、なんの役にも立たなかった。

...タイガー以前にも、パワーを認められた名ゴルファーは多い...例えばパーマー・ニクラス・プレーヤーの時代を作った3人も、その腕の太さと飛距離が売りだったし、次の時代を受け継いだワトソンもその腕の太さから「ポパイ」なんて言われていた。
しかし、そんなゴルファー達だって、それぞれの飛距離でのアドバンテージはあっても、本当に強くなるには「メンタル」の部分での熟成が必要なはず、と考えられていた。
だから、こうした時代を背負うようになったゴルファー達は、皆人間性も立派な人達だと思われていたし、事実そう見えた。

ゴルフの上達には、強くなるには人間形成の時間が必要である。
ゴルフは人間性を深めるのに役に立つ。
ゴルフは耐える事、我慢する事を覚えさせてくれるゲーム。
ゴルフは紳士になる事を助けてくれるゲーム。
...良くそんな風に言われてきた。

そんな事をみんな吹っ飛ばして、タイガーは飛距離全盛・パワー全盛の時代を作ってしまった。
今は、ゴルファーだってジムで筋力を鍛え、他のスポーツでも十分通用するような身体を作り上げ、科学的なトレーニングを続けるようになった。
マチュアの試合は、子供時代からそうした科学的なトレーニングと練習をして来た学生の天下となり、今や中学生や高校生に大人になってからゴルフを始めた人間は太刀打ちできない。
人生のベテランの「我慢」や「耐える」や「平常心」のメンタルなんぞ、若い「イケイケ」の筋力に対してはなんの力にもなれない。

プロの世界も同じく、300ヤードを軽く超えるゴルファー達の天下となり、ベテランの技などが通用する世界では無くなった。
ゴルフは「90パーセントの筋力と、10パーセントのメンタルのゲーム」と成り果ててしまったのではないか?
...ベン・ホーガンが今のゴルフ界を見たら、同じ言葉を言えるだろうか。

とはいえ、競技の世界なんかを離れて自分のゴルフを楽しむ事だけに専念すれば、「80パーセントのメンタルと、20パーセントの筋力」は十二分に納得するゴルフの魅力となる。
たとえ飛距離が落ちたって、昨日の自分に勝つ方法は一杯頭に入っているし、ビビるメンタルをごまかす事だって面白い。
景色に、記憶に、身体の動きを束縛する弱いメンタルを、どう押さえつけて、どう騙してやろうか、なんてのが毎度毎度面白い。

筋力つけて体力つけて「嫌な奴ほどゴルフが上手い」となるよりも、ビビって動揺して嘆いて焦って落ち込んで、全ショットメンタルに振り回されるボンクラゴルフが面白い。
...てことはつまり、自分こそがベン・ホーガンの言う「ゴルフというゲーム」を実践しているという訳だ(笑)。

上手くいかない事だらけでも、だからゴルフは面白い。