ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ヒーローの衰え

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ゴルフにおいて、各時代を代表したヒーローが、主役の座を次代のヒーローに譲って行くときは、いずれもパットが入らなくなったのが原因であった。

ボビー・ジョーンズは別として、ベン・ホーガン、アーノルド・パーマージャック・ニクラス、トム・ワトソン...等々。
彼らが強かったのは、派手に見えるロングショットや、見事なスーパーショットだけではなく、「パットの名手」でもあった、という事なのだ。
それまでは、どんなピンチでも奇跡のようなパットを入れ、チャンスについたパットはことごとく外さず、対戦相手の戦意を削いで打ちのめして来たパットこそ、彼らヒーローの本当の強さだった。

彼らが「時代のヒーロー」の座を誰かに譲る時、それまで奇跡のように入ったパットの冴えは、彼らの手元から去ってしまっている。
一昨年の全英オープンで、奇跡の60歳優勝となるかと期待されたトム・ワトソン。
彼は、その全盛期にジャック・ニクラスとの死闘を繰り返して制した時には、勝負のパットはことごとくカップの反対側の土手にぶつけていれる力強いものだった。
それが、あのときの勝負のパットは、打った瞬間に「弱い!」と判る弱々しいパット...トム・ワトソンがその「新帝王」という名に陰りが出始めた時に、「弱いパットしか打てなくなった」と言われた通りの姿だった。

彼ら去って行ったヒーロー達は、その時でもその素晴らしいショットは決して衰えてはいなかった。
...ただ、パットが入らなくなったのだ。

今、時代を背負っていたタイガー・ウッズが退場しようとしているように感じる。
彼もまた、以前の強いときのようにはパットが入らない。
特に「打てなくなった」のが、今までのヒーロー達の退場の際のゴルフに似て来ていると感じる。
勝負どころのパットをショートする事が多くなったのだ。
その代わりに、パットではないアプローチの切れは変わらないから、チップインではイーグルやバーディーはとれる。
もちろん実力はあるのだから、これからも何勝かはするだろうが...圧倒的に相手を引き離すような勝ち方は出来ないだろうと思う。

それにあのスキャンダルで、今までの虚仮威しの威嚇ガッツポーズは若手にさえ通じなくなり、相手がウッズを畏れて勝手に自滅するような事もなくなるだろう。
男は、その男のつきあっている女性でその男の本当の実力を推し量るようなところがあるが、ウッズの相手はあまりにも...ばっかりだったのが、彼自身を軽量級の男にしてしまった...対戦相手が彼を恐れなくなってしまったのではないか。

この前のドバイの試合で、そんなヒーローの落日を感じた。
派手なチップインは来ても、勝負どころのパットがみんな弱くショートする。
伝説は終わったのだと思う。
...ただ、元気な若手が増えてはいても、まだ彼の代わりのスーパーヒーローが登場するのには、もう少し時間がかかる気がするが...


(それにして、カップから1ピンくらいのところでグリーン上につばを吐く、というのは...あちらではそんなに嫌な事ではないのだろうか。 タイガーのこの行為、気になってしょうがない)