ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

2009年全英オープン最終日

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18番ホールのアプローチ、グリーンオーバーしたボールをパターで寄せた。
ワンピンオーバー。
入れれば優勝のパット...全然手が動かずに,打った瞬間にダメだとわかるパット。
弱々しくパターに当たったボールは,全く違うラインを転がっただけだった。
それまでに何度か「危ない」様子のパットを打っていたが,こんなにはっきり「病気」のパットを見せられたときワトソンの限界を理解するしかなかった。

かって「新帝王」と呼ばれた時代のワトソンは,どんなパットでもカップの向こう側にぶち当てて入れる強気のパットが売りだった。
やがて時が流れ「盛者必衰」の理の通り,弱々しく届かないパットしか打てなくなってしまったというのか。

いい夢を見させてもらった。
いつも3日間のプレーで.距離も短いシニアツアーと違って,4日間長いコースで戦い続けた後のさらに4ホールのプレーオフでは彼にもう勝ち目は残っていなかったろう。

優勝したシンクには全く興味がないので,絵に描く気にもならない。
個人的には、トム・ワトソンがダメだったときにはリー・ウェストウッドに勝たせたかった。
一日目二日目のタイガー,石川のばか騒ぎのときからクールに耐えるプレーを続け、三日目も四日目も自分のゴルフを淡々と重ね,チャンスが来るまで静かにプレーを続ける。
ピンチでもチャンスでも表情を変えることは殆どなく,自分のできることにすべてを集中する。
彼が表情、攻め方を露にしたのは,17番のイーグルパットと18番のバーディーパット。
...気持ちのこもったプレーだった。

イングランド出身のプロゴルファーの優勝は、あのニック・ファルド以来ということだったし,「全英オープン」のためにも勝たせたかった。
勝ったシンクに罪は無いが,まず2度とは破れない「最高齢優勝」「伝説の復活」や「イングランドらしいゴルフの復活」などの期待された夢の数々を破ったのが、最終ホールまで殆ど優勝争いに絡んでいなかったアメリカの中堅選手、ということはゴルフの神様のきまぐれとしか思いようが無い。

こんな「結果」だけは納得しがたいが、ワトソン、ゴギンのアメリカ勢と,ウェストウッド、フィッシャー、c・ウッドのイギリス勢の戦いは,静かに熱く見応えがあった。
みなアンラッキーに耐え,粘り,チャンスが来るまで静かに自分のできるベストを尽くす。
...例えば,此処にタイガー・ウッズがいたらどうだっただろうか?
ミスすれば怒り,吠え,クラブを投げつける。
バーディー、イーグルなんかを穫ろうものなら、ばか騒ぎのガッツポーズを繰り返し,動き回り吠えまくるだろう。
こんなに静かで凄みのある全英オープンにはならずに、安っぽいショーやサーカスの公演みたいになってしまう。
それが好きな人もいるだろうけど,そんな人間とゴルフをしたいと俺は思わない。

過去の英雄の健闘で、思わぬ楽しみを与えてくれた4日間は終わった。
夢は叶わない,老兵は消え去るのみ、人生とはそういうものだ、なんて言葉が残るようだと寂しいのだが...