ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

カテーテルアブレーションの再手術・2...手術

これまた、先に言っておくけど...俺には霊感は無い。
幽霊に会ったこともないし、妖怪を見たこともないし、UFOを見たことも無い。
酒は飲むけど、薬の類は一切経験無いし、幻覚なんぞも見たことが無い。

ただ、前回(5年前)の手術の時に、「麻酔で意識をなくしてから(自分の感覚では)すぐ終わった」と感じていたものが、少し経ってからその手術の間に見ていた夢を思い出した、という事があった。(どうしてもリンクが繋がらないので、2017年5月の「入院そして手術...その2」参照)

さて
5年前と同じように、手術当日までの準備を終えて朝一番で手術が始まる。
尿管挿入でめちゃ痛い思いをしたのに、結局モタモタして手術室での挿入となった。
体格のいい看護士さんに押してもらって、俺の乗ったベッドはエレベーターに乗ったり、長い廊下を走ったりして手術室へと向かう。
何かの映画のように。

 

 

 

手術室に着くと中原先生が迎えてくれて、スタッフを紹介される。
執刀は女性の先生で、中原先生はモニターを見ている。

 

 

 

 

この日最初の手術なのでサクサクと動いて、すぐに頭を固定され顔に箱を被せられ..
すぐに「え?なにこれ!?」って言う驚きが...

 

 

 

 

なぜか、箱の中で俺の目の前にモニター映像が「リアルにはっきりと」見える。
「え?今の手術ってこんなサービスまでするの?」なんて思う...「すげえなあ、科学の進歩って」という驚きと感動(な訳がないんだが)。
このモニターは芸が細かく、患者用と医師用のボタンまでついているのが見える。(冷静に考えれば、麻酔の効いている患者がどうやってボタンを押すんだよ、って話(笑)。)
後から考えれば、こんなモニターが見えるってこと自体が、すでに麻酔が効いている証拠なんだけど...その時の俺は、先生が「体が大きいから、麻酔が...」と言いかけたのを聞いていた。
そこへ、いきなり太ももの付け根に「グサッ」という感覚と痛みが!
俺は慌てて「先生、先生!まだ麻酔が効いてません!」と叫ぶ(叫ぼうとしている)。
でも、口はピクリとも動かず、当然声も出ない。
痛みも、落ち着いて見れば何も感じていない。
モニターの中では俺の3D人形の中をカテーテルが動いて行くのを、先生と助手の先生が操作している。
体の近くでは女の先生が何か操作をしている。

 

 

 

 

凄いと感じていたのは、その3D映像の人形の中を行くカテーテルの「場所の感覚」が、実際の自分の体の中を行くカテーテルの感覚と一致している事...だんだん体の中を太ももから心臓に向かって上がって来る。
その動きに先生の「そこを右」とか「もっと上」なんて言葉が重なる。
俺は頭の中で、先にやった血管の3D映像の中を心臓への道を見つけながら進んでいるんだ...と思っている。

 

 

 

 

その3D映像の人形の中で、いよいよカテーテルが心臓に待って近づいて来る...と、自分の中でもカテーテルが食道を横切って、心臓に着いたような感覚がある。
「ああ、これからやっと本番の心臓の手術か」なんて思っていると...先生の「ちょっと焼いてみましょうか」なんて声の後、前回も感じたあの「胸が焼ける感覚」が...
「え!ちょっと待って!」と、俺が焦る。
「これから何箇所も焼くのを、俺はリアルタイムで経験したくない!」とビビる。
「それは嫌だ、どうしよう?」なんて焦りまくるのに体は動かない。
そんな、混乱の次の瞬間!!

 

「終わりましたよ」

 

という女の先生の実に優しい言葉。
これが現実の声...やっぱり今までのは夢だったんだ。
...良かった〜〜〜。

あまりに鮮明でリアルな映像だった為に、えらく疲れたような気がするが...映像が所々カットされたり、こうして嫌だと思った瞬間に終わったり、いろんな部分で矛盾があったりを自分で見つけているこの流れ...それを証拠に「これは自分で初めて経験する幻覚だ」って確信しているのに、ワクワク感が止まらない。

 

 

 

 

まるでアバターの映画のようなSF的展開の後で、現実世界から聞こえてきた先生の「終わりましたよ」と言う言葉は、なんと言う優しい言葉だったろう。
それを理解した途端、飛び上がって「ヤッホー!」って叫びたくなった。
(もちろん体は動かせないけど)

これはどうも、俺だけの特殊な体験だったらしい。
後で中原先生にこの「自分に起きた出来事」を話してみると、「そうした幻覚が出る麻酔だったのかなあ...」と不思議がってた。

実際には、「手術はあっという間」に終わったという話が普通に経験者から聞かれる。

ただ、俺には生まれて初めての、リアルで鮮明な不思議体験だった。

 

 

 

 

そのあとは結構大変で、昼から飯を食っても良いと言うんだけど...ともかく止血のためにしばらくは右半身絶対安静で、上半身を起こしてはいけない状態で、横になったまま動かせるの左手だけ。
真横になって昼の握り飯を食べても、味もなく顎が疲れるだけで...腹は減っているのに飯が食えない。
夕飯は背を30度まで起こせるって言うので、無理やり握り飯に漬物を挟んで食べてみたけど...なんとも食べ難かった。
まあ、手術当日くらい俺は飯抜きの方が健康に良いんじゃないか、と...薄々感じているんだけどね。

ただ、我慢してれば翌々日には退院できると言うので、ともかくひたすら安静にして我慢....

不整脈は、全く感じられない。


次回、「退院」に続く。