ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

2020年全英女子オープン(ロイヤルトゥルーンGC)

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実は渋野がリンクスには全く歯が立たずに、スコティッシュオープンに続いて二桁オーバーで予選落ちした時に、この試合に対する興味は無くなっていた。

渋野は、昨年の優勝で手にしたアメリカツアー参戦の権利を掴まなかったことで、俺は人生一度の選択を誤ったと思っている。
ゴルフの女神は、そう何度も甘い顔をしちゃくれないのだ。
昨年、渋野は世界的には正真正銘「産まれたてのほやほや」の新人だった。
明るく爽やかなシンデレラとして、その笑顔のゴルフで世界に何かの感動をもたらすことができる者として女神に選ばれたのだろう。

きっと、ゴルフの女神は「それならば」と考えを変えたんだろう。
今年は、悪戦苦闘しても浮かばれず「もうゴルフをやめようか」とまで考えながらも努力を続けていた、ドイツの無名のゴルファーに微笑んだ。
ソフィア・ポポフ...2014年プロ入り、世界ランクは304位、いくら練習してもアメリカ女子の下部ツアーでも勝てず、この試合の前のスコティッシュオープンにさえ「下部ツアーの出場権がなくなるから」とアメリカの下部ツアーの試合に出て参加出来ず、リンクスコースに慣れるための練習ができたのは1日だけだったという。
もっともこの全英女子オープンに参加出来たことだって、もう人生ギリギリの綱渡り...3週前にはアメリカ女子ツアーで友人のプロ(アン・バンダム)のキャディーとして働き、2週前の米ツアーの試合で初のトップテン(9位)に入ってこの全英女子オープンの参加の権利を得た。

実に地味で飛距離も無く、ちょっと神経質で余裕が無いように見え、たとえ予選を通って上位に居たとしても「この選手は間も無くズルズルと落ちて行くんだろうなあ」と思わせる「無名感」漂うゴルファーだった。
一気に流れを変えた、と言うか「輝き」を見せ始めたのが、まだ強風の吹きまくる三日目の4番パー5。
その第2打で、なんと直ドラで強風の下をかいくぐって2オンさせる...そしてピン下3メートルにつけてイーグル!
まるで、「ブスだと思われていた女性がメガネを取った途端に美人だとわかって、急にみんなの注目が集まる」みたいな漫画的展開。
(ちょっと個性的なポポフのスイングを「どう思いますか?」と聞かれた岡本綾子は、「足が長いですね」なんて答えていたのも漫画的)

新型武漢肺炎であらゆるスポーツ環境が変わる中、「無観客」と言う形の試合形式もポポフの勝利にプラスに働いたと思う。
追って来る者のスーパーショットへの歓声や自分を迎える大観衆の声援は、これほど無名の選手のメジャー勝利にはプレッシャーの増大にしかならなかった事だろう。
(あの笑顔で観衆を味方につけた渋野とはまるで正反対だ。)

それでつい3日目と最終日を見てしまった。
本当にこのまま行けるのか?
それともズルズルと落ちて行くのか?
まさか、あのカーヌスティーみたいに心底意地悪なドラマを見せつけようとしているのか?...ゴルフの女神は、気まぐれだから。

てな気持ちで、心穏やかにはなれずに見ていた最終日。
スマイリングシンデレラの次は、ウィーピングシンデレラだったんだなあ...(英語苦手なもんで表現おかしかったら教えてくださいませ)
「ゴルフをやめようと思った日があった」と勝利インタビューで語った彼女。

18番の勝利パットを入れる前の泣き顔は...去年の笑顔に劣らず、素晴らしいものだった。

 

 

ああ、ゴルフがしてえなあ。