ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

言葉

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ニュースを見ていたほとんどの人は、もう既にとっくに「なっている」と思っていたのに、権威を持った人が「パンデミックだ」と言った途端に武漢肺炎はパンデミックだと世界中で大騒ぎになった。
特にヨーロッパでは国境閉鎖だの非常事態宣言だの外出禁止だの...

事実に変わりは無くたって、言葉一つで雰囲気は変わり、気持ちは変わり、その前の日までの世界とは様相が一変してしまう。
国が違ったって民族が違ったって、そうなりゃやることは同じことらしく、世界中のスーパーやドラグストアからマスクが消え、トイレットペーパーが消え、ついには保存食料までが消えて行く。
(こうした騒ぎは、結局有効な治療薬が見つかるまでは続くだろう)

日本じゃ、相変わらずマスクは出てこないけど、トイレットペーパーは見かけることが多くなったし、消毒液も少しずつ出てきた。
マスクを買い占めてネットで転売して来た輩にも、法律の網が被せられるようにはなったけど...「世界的にパンデミック」と言われては、海外転売もあるだろうから一般には出てくることはないだろう...この際「使い捨てマスク」という商品はいっそ見捨ててしまった方がいいかもしれない。
今後は「何度でも使えるマスク」にこそ、環境にも優しい・懐にも優しい最新のアイデアを込めての登場が期待される。


それにつけても、うちの奥さんの入院・治療の開始時期にこの武漢肺炎騒ぎが重なったことは、心配だし不安だ。
(うちの奥さんが受けている化学療法は、薬の効き目と免疫抑制は表裏一体で、それは一般人よりずっとこうしたコロナウィルスにかかりやすくなっていて、かかれば重症化する状態ということだ。)

ただでさえ不安で一杯だろう「人生初の入院治療」で、おまけにこの肺炎騒ぎで面会も基本禁止になる状況で(俺が見舞いに行ってもわずか10〜20分の面会時間)、ただひたすら一人で4週間もの間病院でおとなしくしていなくてはならない。
そして吐き気でものを食べられない状態の中で自分がどうなっているのか、「担当医が治療状況の説明をしてくれない」「ご飯が食べられない」「薬が効いているのかしら?」という不安一杯のメールを毎日俺に送って来ていた。
副作用の吐き気でモノを食べられず、体力が落ちていかない様にひたすらビタミン剤の点滴を続け、少しでも食べられそうなものを一日置きに俺が持って行く...そんな中で熱が出たり寝られなかったりで、かなり参っている様子だった。

そこに助け舟が現れた。
なんと、俺がカテーテルアブレーション手術を受けた循環器の中原先生が、「科が違うのに見舞いに来てくれて、優しい言葉をかけてくれた」と嬉しそうなメールが届いた。
中原先生はうちの奥さんが入院したのと同じ大学病院の医師ではあるけれど、科が違うので連絡はしていなかった。
しかし、うちの奥さんの入院の記事を見てメールを下さったので、一通りの事情はメールしてはあったのだが...まさかわざわざ見舞いに行って下さるとは。
うちの奥さんも「思わず涙が出てしまった。 嬉しかった」と。
「ほとんど一人ぼっちで心細い思いをしていた中で、初めて優しい言葉をかけてもらえた」というのが正直な感想だったようだ。

今回の、彼女の生まれて初めての入院(出産は除く)...それも重大な病気で、ということで不安で一杯の中、何回か看護師さんや医師のちょっとした不注意な一言で激しく動揺したことがあった。
あるいは知りたいことを何も教えて貰えず、ただ不安と焦りばかりが大きくなっていく状態が続いて、本来の明るい性格がすっかり後ろ向きになってしまったり...
(...医療関係の方々は、もっともっと「言葉の力」に注意を払った方が良いのでは?)

同じ薬でも「治る」と信じて飲むのと、「これでいいのか?」と不安いっぱいの状態で飲むのとでは効き目が全く違うと聞く。
今のうちの奥さんにとっては、中原先生の「言葉」が一番効き目の良い薬になったようだ。
ただそれだけで、メールの言葉も明るく元気になって来た。
...中原先生、ありがとうございます。



予定ではあと2週間、俺がしっかりしなくちゃね。