ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

復活、逆転、あるいは再挑戦

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比類無き栄華を極めた者も、やがては落ちぶれて行く時が来る。
並ぶ者無き強者も、やがて敗れる時が来る。
あるいはいくら望んでも夢がついに叶わなかった挑戦者が居る。

お話は普通これで終わるのだが、「to be continued」の看板を決して下ろさずに掲げ続けるものもたまに居る。
「THE END」の看板を自分で出さない限り、それは敗北者とはならずいつまでも「Never surrender」(敗れざる者)であり、その戦いは心を揺さぶる。

なんの影も無く栄誉を極めた者のサクセスストーリーは、それはそれで強い光を放つお話だが、共感するには話が遠い。
我々殆どの人間は、夢を消され希望を折られ、大事な勝負に敗れ続け、栄誉や名誉なんて縁が無い敗北の歴史を積み重ねて生きて来ている。
そんな人間に共感出来るのは、敗北を知ったランナーの諦めない心。
彼等の今後にはおとぎ話の様な成功の約束も無く、かって手にした名誉の残照を消し去ってしまう危険性だってある...更に進化する余地は年々少なくなり、むしろ色々な衰えが忍び寄って来る。
だが、そんな姿にこそ我々の心に訴えかける何かが存在する。

醜聞・故障・病気で光を失ったタイガー・ウッズが、久しぶりに元気な姿をフェアウェイに見せた。
スイング・飛距離はほぼ以前と変わらず、プレーのあちこちに以前と同じ光の輝きを見せる。
故障した箇所の不具合も無いようで、「ひょっとしたら」と思わせる雰囲気もある。
しかし、今回は彼の主催する試合。
プレッシャーも無く、緊張感も無い言わば「遊び」のゴルフ。
今の彼の一番の問題点である、「アプローチイップス」が顔を出す様な要素は無い。
本番の「ここ一番」でどうなるか...それが判るのはもうしばらく後になる。

しかし、チャレンジャーとなるタイガーには魅力がある。
俺はチャンピオンになる迄のタイガーは大好きだったのだから。

もう一人、十代で若くして名誉と金を手にしたイシカワの再挑戦。
5年の挑戦はついに一勝も出来ずに、今年シード権を失った。
起死回生を狙ったスイング改造もまだ完成には程遠く、日本での試合でも結果はまだ出せていない。
だが周りの雑音はともかく、彼自身はまだ情熱の火を消してはいないようだ。
彼が十代で頂点をとったあの時、ゲーリー・プレーヤーが「天才」と評されたイシカワに、「君は確かに才能があるが、世界には君と同じくらいの才能の者があと3千人は居ると思った方がいい」と言っていたのを思い出す。
あの頃は「イシカワと同じ才能があと3千人も?」と、なんだかピンと来なかったものだが、今になると判る。
もし進化することが停滞してしまうと、あっという間にその同じ才能の者達に埋もれてしまうし、もし環境さえ整えば、その才能の者達の中からあっという間にトップランナーが誕生するのだ。

彼の本当のゴルフは、この泥にまみれた場所から這い上がれた時に開花すると思っている。
若くして得た過去の栄誉は、今のイシカワには何の関係もないと、はっきり自覚することだ。


闇の中から這い上がる者の戦いは、その光が当たっていた時代の戦いより、魅力的で美しい。
この二人のゴルフの、今後が楽しみだ。