ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

お前が先に行くとはなあ

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さっき、お前の可愛い奥さんから電話があった。
今日の朝、お前は行っちまったんだと。

今年の始めに脳幹出血で倒れたとは聞いていた。
見舞いに行こうとしたら、そんな姿を見せたく無いから来ないでくれと言っていた、と。
気持ちは判るから、行かないでいるうちに勝手に逝きやがった。
バカヤロー...後悔残させて逝くなんて、お前はなんて酷いヤローなんだ。


絵を描き始めたデザイン学校の、クラスの中にお前は居やがった。
一つ下で、東北出身の酒好き・女好き。
可愛い娘には目がなくて、でも俺と一緒で片っ端から振られてさ。
振られて一緒に安酒飲むのが日課になっちまって、有楽町のガード下で安い二級酒を良く飲んだなあ(水っぽくてちっとも酔っぱらえなかったけどな)。

それでも、結局俺の知り合いの特別可愛い娘をいつの間にか捕まえててさ、結婚するって聞いた時には本気でお前の頭を殴ったな。

飲めば結局つぶれる迄飲む悪い酒で、いつも俺がお前の世話をする事になったっけ。
まあ、お前の事だからみんなも「しょうがない」と大目に見ていたから、それに甘えていたんだよな。

お前が結婚する前だったっけ、俺の中古のジムニーランクルで他の仲間も連れてドライブしたのも楽しかったっけ...俺が運転してるのに、お前は勝手に酒飲んでいて、やっぱりお前を殴ったっけ...お前はへこたれずに「悪い、悪い」なんてほざいて酒飲んでたが。

若い頃「俺が先に死んだら、俺の嫁さんと娘を頼むぞ」なんて俺が言うと、「任せとけ!」なんて言ってたよな。
言葉だけでもありがたかったぞ。
お前の場合は、お前の嫁さんも息子達も、お前よりもずっとしっかりしてるから、俺は何も心配してないけどな。
お前を見てると、息子達がちゃんとした男に育ったのは不思議でしょうがない。
実はちゃんとお前は「親父」をやってたんだよなあ。

最後に喧嘩したのは何時だったっけ?
ああ、俺の個展で、朝から来てるのに一度も俺の絵を見ずに酒ばかり飲んでたんだっけな。
それで「おい、一度くらい俺の絵を見たらどうだ」と怒ったら、「お前の絵は見ないでも判る」とかほざきやがったなあ...
それで「出てけ!」「二度と来るな!」と怒った事があったっけ。

一番最近飲んだ時には、奥さんと二人であちこち旅行しているって言ってたなあ。
今頃やっと奥さん孝行してるってお前は馬鹿なヤツだよなあ、って呆れてたよな。

そう言えば、以前近所のカラオケ屋で、絵を始めた頃からの仲間4人で大騒ぎしたのは楽しかったよなあ。
その一人の鹿児島の親友はその後間もなく脳梗塞脳出血で入院しちまって、今度はお前かよ。
,,,俺が最後に残るだなんて、話がちょっと違うだろ。



なあ、「おい、酒飲もうぜ」と言えば、お前は必ず来るような気がする。
どこに居てもな。



俺はここで、まだしばらく酒飲んでるぜ。