ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

酒が旨い季節に

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白玉の歯に染み通る秋の夜の...

なんて牧水が歌った季節になった。

(吹く風はもうすっかり涼しくて、夏はもう未練を残しながらも引き返せない遠くに行ってしまった。
終わった恋への未練の様に、いつまでも眩しかった季節にしがみついているのは情け無い。)
...そんな風にこの季節を感じていた時代はとっくの昔に終わっている事に、いまさらながら時の過ぎる事の残酷な速さを思う。

北からの凍える風が吹く迄は、冷や酒の旨さを味わえる幸せな季節だ。
紅葉は間もなく関東の低山迄降りて来て、そこいらの名も知れぬ山や野を名も知れぬ地味な紅葉で奇麗に飾る。
ひんやりとした秋の風は、暑さで緩んだ精神でさえしゃっきりと背筋を伸ばさせる。

もう、摘みに贅沢は言わない。
旨い酒を、「旨い」と飲める事に感謝する。
旨いと感じる、心と身体に感謝する。

遠い友に杯を掲げ、壊れた夢や無くした望みに杯を掲げ、別れた人や懐かしい人に杯を掲げる。


大それた事じゃない...こんな時間を持てる事、こんな酒を飲める事が「悔いない」と言う事じゃなかったか。