ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

2016年 WGCデルマッチプレー

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この「マッチプレー」と言う形式のトーナメントは、普段の不特定多数多数相手のスコア集計型テレビ放送用試合と違って、選手同士が当面の敵と潰し合うゴルフの原点とも言える試合なので昔から興味を持っていた。

面白い事に昔から、普段の試合よりこのマッチプレーの方がその才能と魅力を発揮する選手が必ず居て、「へえ、この選手はこんなプレーをするゴルファーなんだ」なんて事を発見するのが楽しかった。

メジャーには届かなかった青木が、その小技を駆使して強敵を破って勝った試合や、バレステロスが普段と変わらずに...というよりさらに暴れ回って、更に生き生きと楽しそうに勝ったり、マシンのような正確なショットのファルドと魔術師のようにボールを曲げて攻めるペイビンの...見てるのが楽しくてしょうがなかった試合や、最近では無名だった(アマでは有名だったが)V・デュビュッソンが奇跡的(と言うより曲芸的か)アプローチを連発して一気に名前を知られたり、その試合経過やそれぞれの対戦結果に新しい発見が多くて実に面白い。

以前は全試合トーナメント一発勝負だったのが、現在は1組4名で計16組の選手が最初の3日間で総当たり戦をし、1位のみが決勝トーナメントに出場出来る形になって、極端なラッキーやアンラッキーはなくなった。
今年は準決勝でマキロイ対デイ、ウーストハイゼン対カブレラベローとなり、マキロイ対デイが事実上の決勝戦だろうと言われていた。
しかし、ウーストハイゼンと言う男は2010年の全英オープンを圧勝した男であり、12年のマスターズと15年の全英オープンで共にプレーオフで負けていると言う隠れた強豪で、圧倒的なアプローチの上手さと正確なショットを誇る不気味な存在である。
実際、準決勝のカブレラベロー戦では「格の違い」を見せつけるような圧勝だった。
デイはマキロイと互角の戦いから最終ホールを押し切って勝利...飛距離も正確性もマキロイに隙を与えるような所は感じさせない戦いだった。

しかし、自分はウーストハイゼンが意外と健闘するんじゃないかと思っていた。
飛距離はデイが圧倒しても、セカンドを先に打ってピタピタとピンに絡ませて先手を打つ...たとえ外してもアプローチはことごとくピンに絡めてコンシードさせる...これはマッチプレーでは相手に常にプレッシャーを与える事になる...試合展開はそうなると思っていた。

ところが、序盤こそそう言う展開になったがすぐにウーストハイゼンがおかしくなって来た。
正確性が取り柄のショットが、左へ左へと曲り始める....普段のスイングより明らかに力が入っている。
確かに、デイの飛距離はおかしい!
普通のロングアイアンでティーショットが250ヤードを軽く超える。
ユーティリティーではウーストハイゼンをアウトドライブし、ドライバーに至っては90ヤード以上の差を付ける...ウーストハイゼンだって飛ばない訳じゃない、300ヤード前後を打っているのに、だ。
結局、本当にボロ負けと言う感じの決勝マッチプレーになった。
ウーストハイゼンにボロボロに負けたカブレラベローは、デイに負けたマキロイに完勝したんだから、決してウーストハイゼンが弱い訳じゃない。
...結局、ゴルファーってのは、いや、男ってのは「飛ばしっこ」に拘るものなのかねえ...男の「業」なのかもねえ...


デイは確かに強い...しかし、あの飛距離はマズいんじゃないか?
今、デイは背中と腰を痛めている、と聞く...ゴリラ軍団の飛ばし専門の人間ならともかく、普通の柔らかいタッチのショットや繊細なパット迄こなす必要があるトーナメントゴルファーが、あれほど飛ばす事はかなり身体に無理をさせているんじゃないか?
確かに腕は太くなり大胸筋の発達もシャツの上からもよくわかる。
しかし「筋肉は鍛えられても軟骨は鍛える事は出来ない」...鍛えた結果の過剰なスピードとパワーのスイングが、結局鍛えられない部分の故障で選手生命を縮めることにならないか、と他人事ながら心配だ。

それともう一つ、これだけ飛距離が我々の感覚と違って来ると、ちょっと(いや、かなりか)シラケて来る。
普通の自動車に乗っている人がF1レースを見ても、丁度サーカスの曲芸を見ているみたいなもんで、面白いけど自分とは関係ない...なんてのと同じで。
参考にならないし、共感もしない....ただ、「へえ~~、凄いね、まるでバケモンだ。」ってだけ。

「まあ、オレのゴルフに全然関係ないから、こんなの見ててもしょうがないな」
...そうなるのが普通だと思う。

オレも、来年はもういいかな。