ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

アバディーンアセットマネジメント ポール・ローリーマッチプレー

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オリンピック狂想曲に乗る気にもなれない、ひねくれ者の目にとまったのは意外だった。
「ポール・ローリーマッチプレー」...世界マッチプレーとも違う、欧州ツアーのマッチプレーらしい。
ポール・ローリーと言えば、あの「カーヌスティーの悲劇」の主人公ジャン・バンデベルデのゴルフ史のドラマの勝利者...結果的にその試合に勝っただけなんだけど、世界的には負けたバンデベルデばかりが有名になってしまって、ローリーの知名度は低い。
そんな彼がホストとなっている欧州ツアーのマッチプレーがこの試合。
マキロイやガルシア、ウェストウッド達は出ていない。

まあ、地味な試合だが...勝ったアンソニー・ウォールと言う、41歳、世界ランク234位、16年前に1勝したきりの188センチ推定100kg以上の巨漢のゴルフが気に入ってしまった。
平均飛距離150位、平均ストローク165位、Fwキープ121位、パーオン率177位....
まあ、どう見ても欧州ツアーの普通の「その他」のメンバーだろう。

しかし、彼のスイングをみて驚いた...インパクトが実に柔らかい。
巨体の割に飛ばないのは、ドライバーもアイアンもアプローチも殆ど同じイメージで柔らかく振っているからだろう。
絶対に「引っ叩く」と言うイメージではない。

極私的な考え方だが、私はゴルファーには二通りのスイングをする者があると思う。
一つはタイガーやノーマン、ワトソン、マキロイ、デイなんかの様に、インパクトの強い、ボールをぶっ叩くスイング。
一つは、エルスやファルド、ペイビン、スピース、グレースなんかの様に、インパクトの柔らかい、ボールを運び操るスイング。

距離はもちろんインパクトの強い叩くスイングの方が圧倒的に出るけど、オレが見ていて好きなのはインパクトの柔らかいゴルファー。
このウォールは、どのショットのインパクトも柔らかくてオレ好み。
ただ、彼の成績を見る限り、トーナメントでは結果は残せていない...しかし長い間ヨーロッパツアーのレギュラーとして残っていると言う事は、数字に出ない強さはあると言う事。

それがこのマッチプレーを見ているとよくわかった。
大抵のホールで彼は相手より20~50ヤード飛んでいない。
しかもグリーンへのショットでも、相手を圧倒する様なキレのあるショットを打つ訳ではない。
グリーンを外したり、バンカーに入れたり...しかし、それをことごとく寄せて来る。
相手が目の前にいるマッチプレーでは、これが強い。
バーディーを取るしかアップ出来ず、しかもパー5では相手がが2オンしていても、3打目で確実にバーディーを取れるアプローチをして来る。
これは3打目がピッタリ寄ると言うより、寄せやすい入れやすい場所に確実に打って来ているから。
ミスしてもミスする場所がいいのだ。

それを続けていると、どうしても相手は無理攻めをして来て自滅する。
おまけに彼が易しい所につけた長いパットを入れて来ると、短いが難しいラインにつけたパットにはよりプレッシャーがかかって、相手は消耗して行く...
そして柔らかいインパクトのスイングはリードしても変わらないから、相手はその自滅を待つ事を諦めざるを得ず、自分が無理攻めをする事しか勝機を見いだせなくなる。

スコアを積み重ねる普通のトーナメントでは、彼の強さは発揮されないだろう。
スピース程のパッティングの上手さがあれば別だけど(スピース・平均パット数1位(アメリカツアー)、ウォール・平均パット数73位(欧州ツアー))。
アンダーを増やすしか上位に行けないストローク戦の試合では、どうしてもバーディーを取る為にウォール自身が無理攻めを重ねて来たんだろう。
マッチプレーは、こうしたゴルファーが発見出来るから面白い。
なんたって、ゴルフってのはマッチプレーから始まったモノなんだから、これが「本来のゴルフ」という事。
ストローク数の競争が当たり前になると、スコア乞食になる人間が多くなって、ゴルフが卑しくなりやすいけど...マッチプレーなら、ほんの少し「嫌なヤツ」になる者が出るくらいで、よっぽど爽やかなゴルフになると思う。



それにしても、あの柔らかいインパクト...真似したいもんだなあ。