ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

練習し過ぎると下手になる

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「練習し過ぎると下手になる、『良い感じ』がつかめたら練習をやめる事。疲れたり集中出来なくなって『良い感じ』を失う事は無い。」...ジャック・ニクラス

ジャック・ニクラスについては今更書く事も無いだろう。
「帝王」であり、真面目であり、努力家でもあった人物。

この言葉をジョン・デイリーあたりが言ったら、あまり説得力も無いだろう...ジョン・デイリーがニクラス並みに真面目に練習していたら、タイガーと並び立つ様なゴルフ史に残る巨人になっていただろうに(あれだけめちゃくちゃやってメジャー2勝なんだから...)。

このニクラスの言葉の「良い感じ」と言うのは、英語では「フィーリング」と言う事なんだけど、我々が良くお会いしては感激して舞い上がってしまう「開眼」なんてのとはちょっと違う。
「開眼」と言うのは、深い霧の中や中国の空のように毒気に覆われた暗いスモッグの中で、突然自分の進むべき道を照らす未知の光に出会った様な(殆どの場合勘違いなんだけどね)感覚だが、ニクラスの言う「フィーリング」は「自分にとって納得のいく感覚」を言うようだ。

経験はあるはずだ。
不安や期待や言い訳のために練習場に行った時。
はじめは上手く行かないスイング、納得のできない...どころか自殺したくなる様な惨めな当たりの連続、身体の動きが違和感だらけでクラブがどこを動いているのかも判らない。
なんとかスムーズに動かそうと思う程、ギクシャクしてバラバラに動き出す手足。
身体の動きを考えるとボールに当たらず、ボールに当てようとすると身体の部分部分が勝手に踊り出す。
思い切り振ったって当たるはずが無いと、ハーフスイングをしてみたってろくにフェースに当たらず、トップにダフりにシャンクに空振りまで...
こんなはずじゃ...と、1箱2箱...そのうちになんとか身体の動きが繋がるようになって来て、フェースにボールも当たり出す。
奇麗でスムーズなスイングにはほど遠くても、芯を喰った快感の当たりは全然無くたって、振る度にボールが空を飛ぶようになれば切ない心も落ち着いてくる。
勿論ボールは右に曲がったり左に曲がったり、でも身体がゴルフっぽく動いてくれれば...何発かに一発は「ホッ」とする様な当たりになってくる(勿論ナイスショットにはほど遠くても)。

悪戦苦闘で汗をかく頃、チェックポイントや自分の悪い所なんかを考えるのも疲れてやめた頃、突然以前のいいときの様なボールが飛び出す。
「ああ、これか」
今打ったように打ってみると、5発に1発、4発に1発、3発に1発、といい手応えになってくる。
「ああ、これだ!」
いい感じに打ててくる...勿論良くたって2発に1発くらいなものなんだけど。
これで...頑張っても2発に1発以上いいタマが出るようになったら、練習はそれでやめた方がいい。
「これを自分のものに」と、更に頑張って練習を続けても、ある時から今度はまたミスが増えてくるはず。
それは、「もっともっと」と欲が出て身体が動き過ぎるから。
本当に身体が疲れ果て、大事な動きが出来なくなってくるから。
そして怖いのが、いいタマが出ると思う「なにか」を意識してやり過ぎるから...所謂オーバードゥ。
そして、そうなると「こんなはずじゃ」と思って更に打ち込む...焦りと恐怖に我を忘れて消えそうなフィーリングを追いかける...これがいけない。
やればやるだけ「下手になる」。
これが「下手を固める」と言う練習になってしまう。

世の練習場のゴルファーの2時間以上練習する人の殆どは、ただ「下手を固めている」だけと言うレッスンプロさえいた。
長い練習時間には弊害が多い、という事だ。

だからニクラスの言うように、「良い感じ」をつかめたらそれで練習をやめる。
そのかわり、できるだけ日を空けずに練習するのがいい。
週に1回3時間練習するより、週に3回「良い感じ」をつかむまで30分練習する方がずっと上手くなる。
その方が身体が「良い感じ」を忘れ難い訳だから。

以前から、「週1回練習に行くより毎日素振りを欠かさない方が上手くなる」とも言われて来たし、思いついたときの重い集中練習より継続する軽い練習の方がずっと上達が早いと言われて来た。
でも、そう毎日練習する時間も取れないし続ける意思が弱いのが世の凡人ゴルファーの常。
たまに練習場に行った時、「良い感じ」になって来たらそれ以上の練習には要注意。
つい、「それを自分のものに」と言う気合いが入るのは判るけど、このニクラスの言葉を思い出して「やり過ぎたら下手になる」と自分にブレーキをかけてみよう。

その代わりに、なんとなく心細かったら次の日にそっとクラブを握って、「良い感じ」を思い出す素振りを少しでもしてみるようにして。