ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

怒った瞬間、ゴルフは壊れる

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「怒った瞬間、ゴルフは壊れる」・・・トミー・(サンダー)・ボルト。

以前書いた「怒りはゴルフの最大の敵である」も同じくトミー・ボルトの言葉だが、こんな言葉を残したこのトミー・ボルトこそ、ゴルフ史上「怒り」が一番話題となったゴルファーである。
なんと言っても彼の行為で、ルールまで変えられたんだから。

トミー・ボルトは1950年代から1960年代に活躍したプロゴルファーで、PGA15勝、シニアで11勝を挙げている。
1958年にはメジャーの全米オープンにも勝っている。
彼は32歳でプロになった遅咲きのゴルファーだが、翌年早くも1勝を挙げる。
しかし、この頃からもう彼の短気は有名になっていて、彼が1ラウンドで何本のクラブを壊すかが賭けの対象になった程だと言う。
この彼の悪癖の為に、PGAは1957年に「トミー・ボルト法」と言うルールを作り、故意にクラブを破損した場合は罰金を科す事にしたと言うから、この短気は本物だろう(このルールは1960年まで有効だった)。
しかし、彼自身もその短気のもたらす弊害は十分判っていたらしく、先の様な警句をいくつも残している。
そして、「自分が癇癪を起こさなかったら、もっと素晴らしい実績を残せたのに」とずっと悔やんでいたとも。

勿論、大部分のゴルファーには身に覚えがあるだろう。
多いのは、「あれだけ努力した」「あんなに頑張った」練習が、「やっぱり」なんにも身に付いてないなんて時に感じる、「自分への怒り」。
あんなに気にして、こんなに注意して、それだけ慎重にやったのに....「バカヤロ!」「ヘタクソ!」「無能!」「アホだ!」「才能なんて無い!」「クソッタレ!」...なんてありとあらゆる罵倒を自分に浴びせながら、悔し涙にくれる。
まあこんな怒りは、普通その結果ますます暗い所に落ちて行くだけなんだけど。

ただ我々ヘボゴルファーのこんな自虐の怒りは、一発のラッキーであっさり変わったりする。
元々大した実力も無いのに、過ぎたる願望と間違った憧れが作り上げた幻影の自分(というゴルファー)が実力相応のミスしただけなんだから、単なるラッキーで「ほら、俺ってやっぱりやれば出来るじゃん」なんて明るい未来が開けた気がして、あっさり立ち直る。

そのくり返しがあるから、ヘタクソでもゴルフをやめられない。
...中には、その自虐が大好きなんて輩もいるけど。

問題は、自分に起因しない怒り。
そう、例えば思いもしない時に「打ち込まれた」とか、スイングの途中に「妨害された」とか、「前の組が二ホールも空けるスロープレー」だとか、「フェアウェイに打ったボールが無い」だとか、「出会う全てがアンラッキー」なんて感じた時。
いくらゴルフが自分が責任を負うゲームだと言ったって、「これは理不尽だ」と感じたときの怒りはなかなか収まらない。
ましてや、その中に誰かの悪意を感じたときなんか、冷静に戻ろうとするのも大変な苦労がいる。

その何が原因にせよ、楽しんで集中していたゴルフはその後同じ様に楽しめなくなる。
せっかくの楽しかるべき一日がフイになってしまう。
怒った瞬間全てが壊れる。

怒らない事だ。
怒らない事だ。

世の中全て、本当は良い事ばかりだと(そんな事無いよなあ)。
世の中全て、本当は良い人ばかりだと(そんな訳無いよなあ)。
....

怒らないで楽しめたゴルフが出来た時が、「たまたま幸運だった」、という事なのかもしれない。
我々がゴルフを好きでいるには、そんなゴルフの記憶だけを積み重ねておくしかないのかも。

くれぐれも...怒っちゃだめだよ、御同輩。