ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

2014年全米オープン4日目

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何のドラマもなく、独走状態のままM・カイマーが完全勝利した。
これだけ差がつくと多少のピンチも余裕でかわして、追う方のゴルファーが無理攻めで自滅して行く展開を高みの見物していればいい状態。
そんな気持ちだからカイマーの「入らなくてもしょうがない」なんていう長いパットは入ってしまい、「これを入れなければダメだ」というパットを打ち続ける2番手3番手のゴルファーはみんな外して落ちて行く。

追うゴルファーの中では、そんなゴルフの神様まで味方に付けた様なカイマーのゴルフを直接見ていながら、大きく崩れずに粘りに粘ったR・ファウラーのゴルフが面白かった。
他には2度の心臓移植を経験しながらプロゴルファーとして12年からPGAツアーに参戦と言う、苦労人エリック・コンプトンの必死のゴルフが目を引いた。

しかし、試合の流れとしてはこんなにつまらないメジャーは久しぶり。
途中何度も居眠りをしてしまった...誰が勝つか、という試合への興味は全く無くなり、淡々とホールをこなすカイマーのゴルフと、攻めようとする気持ちが空回りして自滅するゴルファーを交互に見る繰り返し。
他のゴルファーが何度も外す1M前後は全部入れるし、グリーンセンターに安全に乗せただけのパットが入ってしまう...まるでゾーンに入っている様な「誰も敵わない」という流れ。

なぜカイマーのゴルフを「つまらない」と感じてしまうんだろう。
昨日からそんなことを考えていて、今日彼のゴルフを見ていて自分なりにその理由が判った。
彼のスイングは機械的すぎるのだ...「再現性が高いスイング」が良い、というのはツアープロでもレッスンプロでも誰もが言う事だし、ゴルフのレッスン書にも必ず書いてある言葉だが、カイマーのスイングはその「再現性の高いスイング」そのものだった。
何度かカイマーのスイングを昨日と今日のものを上下に分けて同時にスローで流したのを見たが、バックスイングからインパクト・フィニッシュまで全く同じタイミングだった。
まるでロボットの様に正確に再現されるスイングは、自分にとっては「見事ではあるけれどなんだか血が通った感じがしないつまらなさ」と感じてしまうらしい。
真面目で練習熱心でもあり、そのタイミングやスピードを極限まで正確に作り上げるということは、彼がドイツ人であるせいかも知れない。
同じドイツ人のランガーにはそういう感じはあまりしなかったが、カイマーには非常に真面目で几帳面で、「正確さ」こそが一番の美学という「ドイツらしさ」を強く感じてしまう。

しかし、今回これだけ圧倒的に強かった彼の力が本物であるかどうかは、7月の全英オープンを見ないと判らない。
そんなに風も吹かず、ラフからでも十分グリーンに打てるケースが多かったコースでの勝利が、ただ「ゾーンに入った」為にずば抜けたものなのか「本物」の突出した実力をつけたものなのかは今回の結果だけでは判らない。
...風吹きまくる全英オープンで勝てたなら、彼は真のスーパースターになったのだと言えると思う。

こういう言わば「無敵のゴルフ」は、ずっと以前にデビッド・デュバルの「勝ちまくった半年間」で見た記憶がある。
それは本当にタイガーを含めて世の中の全ての強豪ゴルファーを相手にせずに吹き飛ばした期間...「デビッド・デュバルのゾーンに入った半年間」、デュバルはずっと今回のカイマーの様なゴルフをしていた。
しかしその期間が過ぎ去った後、二度と再び彼にはその「ゾーン」はやって来なかった。

カイマーはどうなるのか...一つ、全英での楽しみが増えた。