ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

楽しまなくちゃ!

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「楽しまなくちゃ! ゴルフは命をかけるもんじゃない、ただの遊びなんだから。」...チチ・ロドリゲス。

チチ・ロドリゲスはプエルトリコ出身のプロゴルファーで、米ツアー8勝、シニアで22勝。
数多いる名ゴルファーの中でそれほど際立った成績ではないが、170センチあまりの細身の体とブレーキボールで有名な小技の冴え、そしてパットを沈めた後の「剣の舞」で人気があったプロゴルファーだ。
リー・トレビノと並び、陽気なキャラクターで知られている。

...覚えは誰でもあるはずだ。
せっかく時間をやりくりし、お金を都合して、やっと天気にも恵まれてたどり着いた、ひと月ぶりのスタートホール。
この前のラウンドのような失敗を繰り返さないために、練習だって十分やった。
スイングの悪いところは、できる限り修正したと思う。
合わなかったクラブも、やっと見つけて分割払いで買った新しいクラブに変えた。
精神的な面だって、自分なりに本なんか読んで対処法は勉強した。

そして緊張しながらも、振り切ったティーショット。
ボールが飛んで行くだろうと思った方向にボールの姿は見当たらず、横にいた同伴競技者が...「フォアー!」。
...そんなはずは...

動揺は収まらないまま、3ホールで10オーバー。
頭の中は「疑問」と「不安」と「絶望」と「怒り」と「悲しみ」と「自己不信」と「後悔」と「屈辱感」が入り交じり、駆け巡り、何一つ光のない真っ暗闇にいるような気がしてくる。
3ホール1時間で、その日が長い拷問の時間に変わったように感じる。
もう笑えるようなことは何一つなく、ただ機械的にボールを打ち、転がし、カートに乗り、とぼとぼと歩く。
スコアカードにスコアを書く、同伴競技者にスコアを聞かれる...そんなことが不愉快さをますます増していく。

「なに、やってんだか!」
チチ・ロドリゲスが、剣の舞で君を一刀両断するだろう。
「遊びだろう?」
「時間と金をかけて遊びにきたんだろう?」
「楽しみだからこそ、努力も工夫もしてるんだろう?」
「まさか、ゴルフに命賭けるとか馬鹿なことやってんじゃないんだろう? そんなヘタクソで。」
「そんだけ落ち込んだり、怒ったり、不機嫌になるなんて、自分がどんだけ上手いと勘違いしてんだ?」
「プロで金も人生も生活も懸けてるこの俺が、こんなにゴルフを楽しんでいるってのに」

チチ・ロドリゲスなら、そんな風に言いそうな気がする。

我々が懸けているのは、食うための仕事。
それぞれ、自分のために、家族のために、あるいは恋人のために懸命に働いているはず。
それに比べて、ゴルフはいくら熱中しても、ただの「遊び」ってこと。
例えいい加減で半端な気持ちでの時間潰しではなく、真面目に真剣に取り組んでいてもだ。
いくら真面目に取り組んでいるといっても、他人に不快感を与えるほど勝手に入れ込んじゃいけない。

多分、チチは真剣に真面目に取り組んでいる遊びだからこそ、「まず、楽しめ!」と言いたかったんじゃないだろうか。
せっかく時間と金をかけてゴルフ場に来たんだ、「これは自分にとって(真剣な)遊びなんだから、ともかく楽しまなくちゃ意味がない」と思え、と。


ま、「絶望と後悔と自己嫌悪と自己憐憫に包まれて、夕方暗くなりつつある空の下、肩を落として家路につく...それがまたゴルフの楽しみ」というのもわかる気がするんだけどね。