ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

やる気

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Fさんはゴルフを始めて10年になる。
30半ばで始めて、もうとっくに40を越えた。

夫に勧められて始めたゴルフだが、以前は何時までたっても全然上手くならないのも気にならなかった。
クラブも夫に買ってもらったものを、別に不満無く使っていた。
三ヶ月に一回くらい近所の奥さん同士のゴルフにも行ったりしたが、みんな同じような120前後のスコアだったし。

それが変わったのは、1年程前に夫と一緒にあるコースに入会してから。
そこは新設の時に高額で募集しながらバブルが弾けて倒産し、経営が何回も変わるうちに会員数が多くなって、最近は会員権は数万円だった。
入会金も二人合わせて50万円もしなかったので、競技に目覚め始めた夫が二人分を買った。
家からも遠くないし、ゴルフプレーをする人数が減っていると言う事で、会員数が多いと言う噂の割には前日に申し込んで、いつでもプレーできた。
料金も二人で1万円少しだったので、去年はプレーする機会が増えた。

そこでFさんは、自分のゴルフを試される体験を重ねる事になった。
ある左ドッグのパ-4。
レディースのティーグランドから140ヤードまで池がある。
池を越えるには140ヤードでいいが、フェアウェイに出るまでは150ヤード。
池の左右にも逃げられるが、どちらも打てる場所は狭く、殆どが傾斜のラフになる。
...ここが上手く攻められない。
練習場の通りに打てれば、150ヤードはドライバーでちゃんと越えられるはずだが、池を過剰に意識するためか殆ど当たり損ねで池に入れる事になる。
左右にボールが行っても、ラフの斜面からのショットは上手くいかず、フェアウェイに出すまで2打も3打も費やす事になる。
殆どの場合は(ローカルルールの)池の前方の特設ティーからの3打目になるが、いつも良くてダボ、普通はトリやダブルパーとなる。
今まで池を越えたのは一度だけ...それも、右からの強いサイドフォローに、右にすっぽ抜けたと思われたショットが上手く乗って、フェアウェイまで届いた。
そのときだけ、このホールをボギーで上がれた。

毎月1回以上このコースに来て、毎回そのホールで池に入れる。
その事に、Fさんの気持ちの中の何かが熱くなって来た。
練習場でのショットの練習も、ドライバーは常にこの池を越える事をイメージして打つ。
夫に「最近ショットの練習も真面目な顔してするようになったね」なんて言われた。

確かに、今までゴルフをして来た中で今が一番真面目に練習しているだろう。
頭の中にはあのホールのイメージがあって、いつもあの池を越えるように打っているんだから。
ちゃんと当たれば180ヤードくらいは飛ぶし、その「ちゃんと当たる」ショットの確率はずいぶん高くなって来てると思う。

しかし...本番では上手くいかない。
先々月も池に入れた。
先月も池に入れた。
あのホールのティーグランドに立つと、身体も頭も熱くなって、いつものスイングが出来なくなる。
口惜しい、本当に口惜しい。

でも、以前と違って、今は結果が悪くても投げたり諦めたりしない。
だって練習ではこの距離は殆ど完全に越えているんだから。
きっと本当に近い未来のラウンドで、自分は奇麗にこの池を越えて、あのフェアウェイから第2打を打てる。
自分では、当たり前の事としてそう信じている。
上手くいかなかったら、練習するだけだ。

どうして上手くいかないんだろう?
今月もまた、入れてしまった。
いいさ、上手くいくまで練習してやる。

スコアは最近はずっと100を切っているけど、それは関係ない。