ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ランクルBJ44での、危機一髪あれこれ..

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ジムニーからランクルになって、本当に何処へでも行ける気がした。

何しろ、当時のランクルと言えば、その頑丈さと悪路走破性では世界最強なんて言われていた。
やっと輸出したアメリカで、サンフランシスコの坂を上れなくて全然売れなかった、トヨタの乗用車の悪評判を一掃したのがランクル
世界中でその性能が評判を呼び、地方の車工場だったトヨタを世界企業にした原動力となった車だ。
...ただし、あくまで悪路走破性と壊れない頑丈さが売りで、「乗り心地」なんてものは殆ど考えられてなかったみたいだけれど。

そういう車をやっと手に入れたものだから、普通の道路じゃ物足りない。
林道や未舗装路を探して乗り歩くのが楽しかった。
車に弱い奥さんも、このランクルのガタガタの乗り心地が「酔ってる暇がない」との事で、喜んでドライブに行った。
小さな子供を乗せて、ガタガタの林道を走って秘境と呼ばれる温泉に行ったり、普通の車じゃ入れない悪路の先の絶景ポイントを訪ねたり...

さすがに家族が一緒に乗っている時は、危険な場所にはあまり行かなかったが、一人で乗る時には結構危機一髪の目にあったりした。
その一つがこれ。
これは本当にラッキーだった出来事。
運が悪ければ、まず命が無かったと思われる事件だった。

遅く始めたスキーに熱中し始めた頃、締め切りが終わるとランクルで夜中に一人で家を出て、スキー場に行くなんて事をよくやっていた。
次の日一日滑って、その夜帰って来るなんて言う、若かったからできた強行軍だ。

で、あるとき、吹雪の中をスキーに行った。
行った場所は忘れたが、快調に吹雪の中を走ってそろそろスキー場だな、という時(当時はカーナビなんて無かった)。
ふと右を見ると、吹雪の中にリフトらしきものが見える。
「あれ、もうスキー場か?」なんて思って、車を止めると同時だった。
止まったと思った車が急に後ろに滑り出した。
結構な傾斜で、下はアイスバーンになっているようだった。
前に走っていたときはグリップしていたタイヤが、止まった瞬間にグリップを失ったらしい。
アクセルを吹かしても、ブレーキを何度も踏み直しても、全くグリップせずに徐々に後ろに加速して行く。
慌てて吹雪の中後ろを見ると、かなりの下り坂でカーブしており、右が林、左は崖となっている。
そのまま加速して行けば、間違いなく崖から飛び出す。
一瞬考えて、とりあえずバックギアに入れて、なんとかグリップを確保してから、徐々にエンジンブレーキを訊かせれば...と、バックに入れる。
とたんに車は左に尻を振って崖の方に!
「落ちる!」
と覚悟した時、ガタンと大きな音がして、後輪二つが崖に落ちて車が大きく上を向いた...

落ちる事を覚悟した瞬間が過ぎて...車はそのまま動かない。
おそるおそる車から降りてみると、まるで漫画かアクション映画のように後輪二つを崖に落として、車体の中間辺りで止まっている。
微妙なバランスに見えたが、ディーゼルエンジンの重さがそのバランスで落ちるのを停めてくれたんだろう。
ほっとして深呼吸した時に、全身に冷や汗をかいているのがわかった。

吹雪の深夜2時。
こういうときのために、と用意していた小型ウィンチ「チルホール」を後部座席の下から引っ張り出し、道の向こう側の立ち木にワイヤーを巻いて、今度は熱い汗をかきながら一人でウィンチを巻いて車を引っ張り上げた。
無事に車を道路に戻した時には、4駆を過信していた反省とともに、神だか仏だか、あるいはヤオヨロズの神々に感謝して、えらく信心深くなっていた。

このランクルは、それまでもスリップして30メートルくらい道路を滑ったり、車中泊していて車ごと雪に埋まってしまったり...
まさに、ランクルBJ44は、「愛と冒険の車」だったのかもしれないなあ(自分が若かっただけかも?)。

この後、30代半ばでゴルフの仕事を初めて、このランクルでいつもゴルフ場に行く事になり、更に珍事件を引き起こす。