ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

憧れの車、ランドクルーザーBJ44との日々が始まった

「次女が生まれると家族が4人になる」、というのは「もうジムニーじゃ足りない」という事だった。
(360ccの2サイクルエンジンジムニーは、交換タイヤが室内に取り付けてあるために乗車定員は3人にしかならない。)

家族4人が安全に乗るためには何が良いのか...まだ食うのがやっとの貧乏イラストレーターにとっては身に余る大きな買い物なのだが、当時は「車を買うことは、その人の生き方を買うことだ」という考え方だった。
...「ならば、あれしかない」という車が、俺にとってはランクルのBJ44だった。

f:id:ootataki02:20200705161000j:plain

もちろん手持ちの現金だけでは足りずにローンのお世話になるのだが、この車の選択にうちの奥さんも賛成してくれたのが購入の決め手となった(うちの奥さんはジムニーを買った時にも「うちが車を持てるとは思わなかった」なんて泣いていたくらいだから、もっと広くて力の強い車なら文句はなかったのかもしれない)。

BJ40系には2種類あり、BJ42は後席が折りたたみ式向かい合わせの短いボディーで4人乗り。
BJ44は、後席が4人乗りの折りたたみ式の長椅子で6人乗り。
家族で乗るにはBJ44の一択しかなかったのだが、これは42に比べると圧倒的に数が少なく、何日もこの車を探して東京中走り回った。
やっと見つけたBJ44は、3年落ちで5万キロ走行で150万円弱。
外見は綺麗だが、あくまで「工事現場で使われていた車」の状態で、タイヤにはあの荷車用のタイヤみたいな、通称「鬼タイヤ」と言われる磨り減ったタイヤがついていた...これは無骨な外観の上体に比べて、えらく貧弱そうな下半身という見た目カッコ悪いバランスだった。
そこでまず、当時愛読していた「4x4マガジン」などで情報を集めて、タイヤの交換に取り掛かった。
当時の多くの4WDは、B.Fグッドリッジの「オールテレーン」か「マッドテレーン」などを装着して未舗装路や林道・雪道などの走行を楽しんでいたが、俺はそれらと同じものを避けてヨコハマタイヤが当時新発売といって宣伝していた「スーパーディガー」マッド&スノータイヤを装着した。
今になって写真を見ても、貧弱に見えた足回りがしっかりして見えて、すごくバランスが良くなったと自分では思っていた。(このタイヤについては、あっと驚くエピソードが...それはまた後日)

ただ家族、それも幼児が乗るにはこのままではハード過ぎるのと安全性を考えて、さらに色々と改造を加えて行った...その結果、一応「こんなものか」となったのが、下の写真。

f:id:ootataki02:20200705161039j:plain

こうした装備で山奥の林道を走ったり、温泉に行ったり...ジムニーと違って高速もゆったり走れて、走行もずっと安定していたので(若さのせいもあって)ドライブは楽しく、遊ぶ世界は広がって行った。

ただし、タイヤの交換から始まったこうした格好・スタイル目的の改造や装備の取り付けには、ランクルと暮らす日々の中で様々な気づきや反省、迷いが出てくることは多かった。

これから色々と書いていこうと思うけど、まずは一つだけ。
細くてひ弱そうに見えた鬼タイヤから、格好の良い太いマッド&スノータイヤへの交換はほぼ満足しているのだが、元のタイヤが細い正当な理由もあるということ。
それはこのランクルには、「パワーアシストは一切無い」から。
つまり、このランクルは「パワーステアリング」ではなく、「パワークラッチ」もなく、全ての運転作業は腕力・脚力頼みの肉体作業なのだ。
今の車には100%「パワーアシスト」が付いているから、みんな気がつかないだろうけど...例えば舗装された路面での車庫入れとか駐車の時、この車重とタイヤの太さでパワーアシストのついていないハンドルの重さというのは、女子供じゃビクとも動かない「めちゃくちゃな重さ」なのだ。
...下が土の場所ならそれなりの力で動いてくれるが、舗装した路面での「据え切り」は並の大人の男でも不可能だろう...
少しでも動きながらならなんとかなるが、それでも俺が「このやろー!」なんて声をあげて全力でハンドルを切らなければ、タイヤは動かない。
(これは逆に言うとタイヤからのキックバックも「危険なほど」強く来ると言うこと...この話は長くなるので後日また)


ランクルになってから、打ち合わせなどに車で行くと大抵の編集者はえらく驚いていた(当時は4駆ブームのずっと前)。
しかし、俺の仕事にとってはプラスになる事ばかりで、マイナスになったことは一度もなかった。
初めて会った編集者に、「始めて会うクリエイターの方の車が、広く人気のある車や売れているだけの車に乗っていたりするとちょっと不安になります。高い車という訳じゃなくて、癖のある車とか古くてもボロでも何かこだわりのある車に乗ってらっしゃる方だと良かった、と思います」なんて言われたことが数回あった。

お世辞かもしれないけど、ランクルも頑張ってくれてたんだ、と思うことにしていた。