ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

今からでも遅くはない

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ビュン! という大きな素振りの音に振り返った。
からして若い人だろうと思ったんだけど...そこにいたのはかなり年配の男だった。

その人、Yさんとはあるオープンコンペの「シニア&レディース杯」で同じ組になった。
50歳から参加資格があるという事だったが、明らかにYさんは参加者の中でも1~2の年長ゴルファーに見えた。
他に同じ組になったのは50歳になったばかりの人と、60代半ばの人。
挨拶をすませたあとのティーグランド脇で、その音を聞いた。
「え?」と顔を見合わせる3人。

今度は3人が見ている前で素振り...「ビュン!」。
「ホントかよ..」50代の一人。
「あの...お年はいくつですか?」60代半ばの人。

「あ?  あの、私は73ですが...」

それでその素振り?
その素振りの速さは、殆ど30代、40代の人のそれと変わらず、背中にシャフトが当たるくらいまで振り切るスイングは、とても70代の人のものじゃなかった。
そして素振りの通り、実際の打球も若々しくいつも2番目か3番目に飛んでいる。

ちょっと当たり損ねると置いて行かれる我々3人は、妙に力が入って一人ずつトラブルになる。
...ハーフ上がると、3人ともスコアも負けていた。
「ゴルフは長いんですか?」
「いやいや、私は50になってからゴルフ始めたんです。」
「しかし、70過ぎてあんなに振れる人は見た事ありませんよ。」
「ああ、私、年が年ですから、結構トレーニングしているんです。」
「今でも、一日に腹筋100回、腕立て伏せ100回はやります。」
「市のトレーニングセンターにも、週3回行ってるんです。」
「年金暮らしですが、市のトレーニングセンターは月3000円で出来ますので。」

若い頃から運動が好きで、野球、テニスと続けて来たが、40代の時にアキレス腱を切ってしばらくスポーツをやらなかったそうだ。
それが50になって、友人から勧められてゴルフを始めた。
「もう諦めていた、スポーツで競技を楽しむ事が、また出来るなんて嬉しくて仕方なかったですねえ。」
「ゴルフにはたちまち熱中し、それからずっとゴルフが僕の生活の中心です。」

ゴルフを始めてから、10キロ減量し、食事に気をつけ、酒は程々にして、煙草はやめた。
はじめは走っていたが長続きしないので、市のスポーツセンターに申し込んでジム通いを始め、練習場も安い時間の打ちっぱなしに週2回。
それをずっと続けていると言う。

「ゴルフは何時始めても遅くはない」って本に書いてあるのを読みまして、座右の銘を「今からでも遅くない」にしたんです。
私、ゴルフって、続ければ絶対に今日より明日が上手くなるって信じてます。
だから、いつも打つ前には「今からでも遅くない」って言うんですよ。
そうするとクラブがよく振れるし、楽しくなります。
...圧倒されて、我々3人はその言葉を聞くだけだった。

Yさんは、そのコンペのグランドシニアのベスグロ、新ペリア優勝、それにニアピンまでとって賞品山盛りで帰って行った。

「今からでも遅くない」...俺もかなあ...