ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

ワンス アポン ア タイム

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来月の末に、ゴルフをすることになった。
15年ぶりか、20年ぶりか...良く覚えていない。
道具の一切は、高校時代からの親友に借りることになっている。

一時は熱心にゴルフをやっていた。
というより、仕事もそっちのけで熱中していた。
会員権も3枚も持っていた。

父親から譲り受けた会社は、従業員は12人程だったが安定した業績を上げていた。
父親の築き上げた信用と職人達の確かな腕で、経営は父親の代から働いている専務に任せておけば、問題なかった。
28で可愛い奥さんと結婚して、男の子と女の子と、、それほど大きくはないが小奇麗な家と、一応ベンツを乗り回せる収入と...
ゴルフの腕もシングルの7迄行って、こっそりつきあっている女性もいて...
人生とはこんなもの、これが普通にずっと続くと思っていた。

状況が変わったのは、仕事の8割を占めていた会社の倒産。
その会社もまた、親会社の倒産のあおりを受けての倒産だったが、いきなりピンチに立たされた。
専務に、もう会社の資金繰りがどうにもならないことを知らされた。
学生時代の知り合いに弁護士を紹介してもらい、善後策を相談した。

まずやったことは、離婚。
出来る限りの資産を上手く分けて、妻と子供が他人になることを決める。
専務初め、父の代からの職人達に、金をかき集めて分けた。
もちろん退職金にもならないことを謝りながらだったが、皆事情は理解してくれた。

そして、残った自分に出来たのは、自己破産しての「夜逃げ」だった。

とても払いきれない負債を、法律的になしにしてしまい、自分は身一つで行方をくらますしかなかった。
本当は、なんとか300万円程を残しておいて生活費の足しにしようと思っていたが、自己破産の手続きやら弁護士費用でそのほとんどの金が無くなり、結局ホームレスとして逃げるしか無くなった。

それから今迄...良く生きて来られたと思う。
年に一度、娘や息子と連絡を取る以外、隠れ続ける生活をして来た。
今年、連絡をした時に「元」妻に言われた「高校のクラス会の葉書が来ているわよ。」
その久しぶりに東京に戻って来たクラス会で、親友に言われた。
「もういいんじゃないか?」

借金を踏み倒した相手に顔向け出来ないのは変わりないけど、東京で、家族のそばで、親友と、ゴルフをする...そんな気になった。
昔の、華やかで、浮ついて、見栄ばっかりで何も感じていなかった、眩しいようなゴルフにまつわる世界と、今の、思い出したくもない10数年を経ての遠かったゴルフの世界。

自分がどんなゴルフをするのか、スタートホールで何を感じるのか...
なんだか他人事のように考えているのが不思議だ。
ただ、その日が近づくにつれて、「もし、第一打をナイスショット出来たら、もう一度家族と生活を作り直すことが出来るんじゃないか」なんて考えが強まって来ている。

ティーショットが奇麗に空を飛んだら、この10数年のことを「昔、昔、ある男が...」とおとぎ話に出来るような気がする。

Once upon a time ...