ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

弁当箱

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その上品そうな夫婦に会ったのは、とあるオープンコンペで組み合わせになったとき。
真っ黒に日に焼けた、いかにも回数多くゴルフをやっている雰囲気の漂うご主人と、おっとりとした穏やかで上品そうな雰囲気の婦人は、ゴルフ歴はもう40年近いという夫婦だった。

特に旦那さんのアプローチと夫人のパットは、見応えのあるベテランの技とも言える見事なものだった。
ただ飛距離が出ない分、旦那さんはハーフ42ー43、夫人は45ー46というスコアであったけれど、プレーも速く、合間の会話もゴルフ知識が豊富で愉快なラウンドとなった。

そして、昼の休憩でレストランに入った時だった。
その日のコンペは食事付きで、一部の差額が必要な料理以外は何種類かの中からどれを選んでも良いと言うもの。
その夫婦は、それぞれカツライスとチャーハンセットを頼んだ。
ハーフラウンドの内容を談笑しているうちに、注文した料理が揃った。
すると夫人が、持っていたバッグの中からプラスチックの弁当箱を取り出した。
不思議に思って見ていると
「私達、ゴルフの時には朝食べてから間がないので、お昼はいつも残していたんですよ。」
「それで勿体ないから、箸を付ける前にいつも残すくらいの分をお弁当箱に詰めてしまうんです。」
「これは私達の、今日の夕食になります。」
「当然痛みやすい生ものは入れられませんから、こういうものだけ入れるんです。」

まずチャーハンを殆ど入れて、カツを数切れ、チャーハンセットのシューマイや餃子、漬け物や酢の物などをそれぞれ区画された場所に器用につめて、弁当箱は一杯になった。
残ったご飯やカツを二人で分けて、美味しそうに食べる。
「私達にはこのくらいで調度いいです。」

その弁当箱は、夏はロッカー、冬は車に置いておくのだと...

ラウンド終了後は、風呂に入った後オープンコンペのパーティーになる。
そのゴルフ場のパーティーは数点のパーティー料理が出るので、確かに昼食が軽くても夕食までにお腹が好き過ぎると言う事はない。

でも、時代がこういう事を自然にしているんだろう...少し前までは、昼食をとらない(昼食が込みでない場合に)事さえ、色々と言われていたのに。
お昼を食べる前にお弁当箱を出して、それに料理を詰め込む人はこの時初めて会ったけれど、ほとんどを残してしまう人よりも本来ずっと「当たり前」の行為なんだと思う...

ゴルフを楽しむためのラウンド、ゴルフを十分に満喫したら他の事はなにも見栄をはることなく、普通の感覚で生きて行けばいいじゃないか、と。
マナーはマナーであって、つまらない見栄ではない。