ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

閑話休題...002

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夏の暑い日射しの中、
誰よりも強かった。
明るい世界を胸を張って生きてきた。
自分にも自分が愛したものにも、
誇りを持っていた。

今、夏の光は消えて
若さも力も消えてしまって
ただ、下を向いてうなだれているように見えるかもしれない。
でも、自分は自分の人生を
「つまらなかった」なんて言わない...


越後屋美術サロンで開いた、2回目の個展だったか...
ふらりと立ち寄った、品の良さそうな老紳士がこの絵の前で立ち止まった。
1時間ばかりいたろうか...会釈をして帰って行った。
次の日、またその老紳士はやって来た。
また、暫くこの絵を眺めていたあと、「この絵は売って下さるんでしょうか?」と聞いてきた。
「はい、額をつけて2万円でお譲りしています。」
「でも、私の絵を買っても、将来高くなるとか資産価値なんかは出ませんから、ご承知下さい。」
「そんなこと関係なく買いたいのですが、一つ心配なことがありまして...」
「私は息子夫婦と一緒に暮らしているんですが、私がこの絵を持って帰ると、息子夫婦が気を悪くするんではないかと..」

個展の最終日、3度目に来てくれた老紳士は、大事そうにこの絵を持って行ってくれた。

後日、その紳士から手紙があり、「息子夫婦に見せるのを心配していましたが、息子夫婦の方がこの絵を気に入ってしまって、自分たちのリビングに架けてしまいました。」

そうですよ、いい息子さんと嫁さんに大事にされて、
貴方の一生がつまらなかったなんて事は、絶対にありませんよ。)


(別室ブログ「人・酒・旅 イラストレータ渡辺隆司」に発表しているものです。
お暇が在れば、覗いてみて下さい。 
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