ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

甘ったれ

別に俺に懐いているわけじゃない。
飼い主はうちの奥さん...まあ、餌をくれる人が一番の飼い主だと思っているのは普通の猫とおんなじ。
そのうちの奥さんが見当たらない、忙しくて相手をしてくれない、なんて時には散々うちの奥さんを呼んだ後、俺のところに来て「撫でて」と言う。

それも、俺の椅子の周りを回りながら、ほんの小さな声で「ナオ」「ウニャ」「ウ〜ン」と呟くような声を出す。
「今、忙しいんだけど」なんて言っても関係無い。

しょうがなくて抱き上げると、写真のように膝の上で左手を枕に右手のペンで全身を撫でられる形を一番好む。
すぐに聞こえないくらいの小さな声で「ゴロゴロ」と喉を鳴らし始め、両手を伸ばしたり縮めたりのモミモミし始める。
気持ち良さそうなのはわかるが、この間俺は両手を使って撫でなければならず、イラストを描く作業は一切できなくなる。
「もういいよ」と伸びをして膝から降りるのを待っていると平均30分はかかる...もちろん機嫌が良いと1時間近くモミモミし続けることもある。
(おかげで俺の室内上着の左関節付近は糸がほつれてボロボロになっちまった。)

手のひらに乗る大きさで拾われて来てから何年になるだろう。
「触られ放題の大人しい猫」という特徴は変わらず、ひたすら静かに影に紛れようとする。
薄いグレーで周囲の景色に溶け込む「隠遁の術」しか特技のない猫は、今の季節日向を求めて静かに静かに場所を変えつつ隠れて生きている。

 

そうそう、撫でてやる時に俺の気持ちが入ってないとそれを敏感に感じるようで、まるで俺に別れを告げた女のように「チラッ」と失望感のある眼差しを投げつけながら、スッと膝から降りて去って行く...


...女猫の心は難しいなあ(笑)。