ケ・セラ・セラと生きて、セ・ラビと酒を飲み(イラストレーター渡辺隆司のブログ)

なるようにしかならないけど、それが人生...せめて酒に唄って行きますか

暗い朝に集まって...

「ゴルフがやりたい!」という一念に共感した同世代4人が集まった。
まだ高かったプレーフィを何とか絞り出し、プレー可能なはるか100キロ彼方のゴルフ場で遊ぶには、同じような情熱を持った仲間4人で集まって1台の車で何とかするしかないと話は決まった。
朝の4時に4人の誰かの家に近くの空き地に車を止めて、当番の一人の車にキャディーバッグやボストンバッグを詰め込む。
いい加減車の中は満杯で、膝の上にキャディーバッグやボストンバッグをおいてやっと4人が乗れた。
車は持ち回りのはずだったが、一人の車はスポーツカータイプだったので4人プラス道具一式は詰め込めず、他の誰かの車に変わることになった。
こうやってガソリン代や高速代は割り勘にして、まだ真っ暗の朝の道路を走り出した。
眠いし窮屈だし酷い乗り心地だったが、「これからゴルフだ!」というだけで気持ちは高ぶって話が弾んだ。

が、やがてそのうちの一人が「栄転」という形で、出身地に近い地方に転勤することになった。
一人欠けたが、すぐにこの4人が楽しくやっている姿を見て、ひとまわり若い同僚が参加を申し込んで来た。

相変わらずのヘボどうしながら、こんなゴルフのやり方が楽しくて続いたこの会も、やがて生活の実感に押し潰されて行く(みんなゴルフを始めたのが30半ば過ぎだったので、意外に定年までの時間が早かった)。

一人は老後の年金生活のためにゴルフを卒業し、一番若かった男も親の介護のために故郷に帰った。
残った二人は会社に嘱託として残りながら、二人に減ったゴルフを続けていたが、ある日一人がコースで胸の痛みを訴えた。

一人になってしまった男はしばらく「お一人様ゴルフ」を続けていたが、ショットの間にため息をつく事が多くなり,,,クラブを置いた。


散歩で歩くコースに落ち葉が舞う頃、男は小さな車に4人がぎゅうぎゅう詰めで乗り込んで、まだ真っ暗な朝をコースに向かった日々を思い出す。

風に吹かれた落ち葉が一枚、ケタケタ笑いながら「あの頃は面白かったよな」と男の周りを飛び回る。